役員が総会で反対【前編】~理事長と委任状

携帯電話基地局を設置したいという提案が舞い込んできた、とあるマンション。

管理会社としては、管理組合の意向を尊重するだけです。

そして管理組合にとってのメリットは賃料収入、ただその一点のみ。
逆にデメリットは、税金がかかる・外観が変わる・電磁波を心配して嫌がる人が居る、などなど。

別の記事で書いたように、1人でも反対者がいるようなら、数で押し切って設置するものではないと思っています。

そのマンションでは、理事会で業者から一通りの説明を受けたところ、理事長をはじめとする役員全員が賛成しました。

理事長
理事長

特に問題無いようだし、収入になるから進めましょう

では、臨時総会を開催する方向で。

業者も総会に呼んで、参加者に計画を説明してもらいましょう。

ただ、このマンションは財政的にも潤沢で全く困っておらず、役員全員がすんなりと賛成したことに多少の違和感を覚えました。

ところが、いざ臨時総会では出席者から多くの否定的な意見や質問が続出し、私もこの流れなら否決だな、と思っていました。

意見が出尽くしたところで、理事長(議長)が採決を取ります。

理事長
理事長

議案に反対の方は、挙手してください!

(あれ、賛成者が挙手するんじゃないんだ)

すると全員が反対ということで挙手。…全員?

理事長も理事も挙手してる

総会で「理事長が反対」「理事が反対」というのは、たまに起こる問題です。

ということで、役員が総会の議案に反対することについて考えてみました。

理事長は総会で反対していい?

理事会の多数決で決まったけど、理事長個人は反対というケース。

総会に議案が提出された以上、一般の組合員にはそんな裏側の事情は分かりません。
議長(理事長)宛に委任状を提出した人も、まさか理事長が実は反対派だと思わないでしょう。

※議長と理事長は、基本的に同一人物です
  標準管理規約 第42条(総会)
   
5項 総会の議長は、理事長が務める。

理事長は「賛成」が前提

理事長は総会を招集している立場ですから、前提として「賛成」のはずだと、少なくとも外観上はそう見えます。
だから、理事長が反対しようとすると、2つの問題点が考えられます。

  1. 理事長が一組合員の立場として議案に反対していいの?
  2. 理事長宛の委任状をどう取り扱うの?

理事長が個人的に反対できるか

理事長(議長)
理事長(議長)

一組合員として、自分の権利を行使したい!
だから総会では反対します!

はたして、この意見は通るのでしょうか?

総会は、議案の承認を求めて理事長が招集しているものですから、反対票を投じるのは問題がありますね。
理事長あてに委任状を提出した人たちの意向を無視することになります。

理事長は、理事会の決議(ここでは承認・可決を目指して総会を開催するということ)に拘束されます。個人的な意見は別にして、賛成票を投じるべきです。
どうしても反対したいなら総会を招集する前に役員を辞任するのが筋でしょう。

理事長あて委任状の取り扱い

理事長(議長)
理事長(議長)

じゃあ間を取って、委任状の半分は賛成票、半分は反対票に投じます!

ついつい折衷案と言う名で、白黒つけず濁したくなることもあります。

しかしこのような取り扱いが認められるのか、考えてみる必要があります。

委任状の真意とその取扱い

これを考える前提として重要なのは、委任状は、委任した相手(受任者)の判断に任せるものということです。
受任者が賛成するなら賛成、反対なら反対。

次に、委任状を提出した人の真意(気持ち)は2つの捉え方ができます。

 ① 賛否がハッキリしていない(理事長に委任のみ)
 ② 賛否がハッキリしている(意見が明記されている場合など)

委任状①
委任状①

総会で決まったことに従うのでお任せします!

理事長あての委任状で、特にコメントも何も書いていない委任状は「議案に賛成」として取り扱うのが一般的です。
「議案の提案者である理事長に委任しているから賛成」と解釈できます。
言い換えれば「理事長は賛成のはずだ」という信義則から成り立っています。

委任状②
委任状②

理事長に委任します。
もちろん議案は賛成です!(積極的意思表明)

次に、賛否がハッキリしている委任状の場合は、委任者の意思(仮に反対でも)が優先されます。
だからこの場合は、理事長自身の「賛成」と委任者の「反対」を別々にカウントすることができます

委任状は賛否を半分に分けることができない

① 賛否がハッキリしていない委任状(理事長に委任のみ)
委任は、受任者(理事長)の判断に委ねるというもの。
そして受任者である理事長は、理事会の決議に拘束されるので「賛成」の立場でなければならない。
よって、全ての委任状を賛成票に投じるべき

② 賛否がハッキリしている委任状(意見が明記されている場合など)
委任者の賛成・反対の意思表示が優先される。
よって委任者の賛成・反対の意思に沿って分けて投じるべき

この件について、マンション管理士試験で過去問で取り上げられたことがあります。

<<参考>>マンション管理士試験 過去問(平成23年 問29)
理事会の決議を経て通常総会に提出された議案について、理事長と監事が反対している場合において、理事長には受任者を理事長とした委任状が、監事には受任者を監事とした委任状が提出されているときの取扱いに関する次の記述のうち標準管理規約及び民法の規定によれば、適切でないものはどれか。

 1 理事長は、役員を辞任すれば、自分の1票を反対票として使うことができる。
 2 監事は、自分の1票と委任状を反対票として使うことができる。
 3 理事長は、自分の1票と委任状を賛成票として使わなければならない。
 4 監事は、委任状を総会出席者の賛否の比率に応じて分けて使うことができる。

【解答】
1…役員を辞めれば理事会決議に拘束されないので
2…監事は理事会の決議に拘束されないので
3…理事長は賛成の立場でなければならないから
4…委任状の性質は、受任者(ここでは監事)の賛成・反対の判断に委ねるもの。監事の1票を「賛否を一定の比率で分割する」ことは出来ない。したがって委任状の賛否を比率に応じて分割することは出来ないから×

自分の経験を思い出して気軽に選んだテーマだったんですが、書けば書くほど深いことが分かりました。
というのも直接的に条文や規約に答えが明記されておらず、様々な見解もあるため、根拠を突き詰め、かつ簡潔に整理するのがとても難しかったです。

長くなったので、次回は理事長以外の「理事」、総会のあり方などについて、まとめてみようと思っています!

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