たまたまAmazonで見つけたマンション管理員オロオロ日記という本を読んで、そういえば住み込みの管理員さんも随分減ったなあと思いました。
大型マンションでは24時間交代制の本当の常駐勤務もありますが、そういうのではなく、昔ながらの夫婦で住み込み管理のお話しです。
最近ではめっきり住み込み管理が少なくなっているので、その背景を書いてみます。
夫婦で採用されることが多い住み込み管理員
もっともオーソドックスなのは、夫が「管理員」、妻が「清掃員+管理員補助」という夫婦での採用形態だと思います。
管理員補助というのは、管理員が不在の時の受付など、お手伝い的な簡単な役割をします。
ただし妻の「+管理員補助」は雇用契約に入っておらず、成り行き上、夫の不在時に受け付けしていることも多いです。
この点は、住み込みの勤務の1つ目の問題ですね。
ちなみに管理員だけ住み込み(単身者)、清掃員は別に通勤、というパターンもあります。
不人気?・・・いや、意外に人気があるかも
最近は住み込み管理員さんを募集しても、誰も応募してこないでしょ?
そう思われがちなんですが、募集してみると意外に応募の数はあります。
給料の水準が特別高いというわけではないのですが、次の点が人気の理由のようです。
- 住居費(家賃)が無料
- 水道光熱費が無料(一部負担の場合あり)
- 時間外手当支給(夜間対応、夜の理事会参加など)
- 特別な資格、知識、経験は求められない
中でも家賃や水道光熱費がかからないので、実質の給料が数万円上乗せということになります。
ハローワークで募集をすれば、全国各地から「移住して住み込みで働きたい」という応募がけっこう来るんです。
地方から移住はいいけど、どうやって面接するのさ・・・
住み込み管理人は、通勤管理人以上に慎重に採用を決めます。
もちろん直接会って、現地も見てもらってお互いに納得してから決めるので、遠方の方は面接そのものが難しいのでお断りしています。
住環境はお世辞にも良好とは言えない
夫婦の住み込み型は、築40年くらいのマンションで見られます。
住居は管理事務室に併設されていて、間取りは広くて2DK(4+6畳くらい)、狭ければ1DKということも。
夫婦で住むにはちょっと狭いです。
管理員が交代するときに管理組合がハウスクリーニングや畳表替えをしてくれますが、最低限のリフォームですから設備の古さなど、良好な環境とは言えません。
労働時間は週40時間・・・?
月~金曜日、または月~土曜日の中で、週40時間以内という労働契約になります。
ですが、管理事務所の入り口にインターホンが付いているので、住民さんたちは困ったことがあればピンポンを鳴らしますし、電話もかかってきます。
もちろん労働時間外ですが、そこで「時間外だから対応しません」と断る人は最初から住み込みに応募しないので、やっぱり対応してくれるわけです。
長年それが当たり前に続いてきた「慣習」になっていて、時間外の対応(それも緊急ではない場合も)が常態化している問題があります。
正直、私たち管理会社もその管理員さんの対応に甘えている部分があることは否めません。
これが2つ目の問題です。
時間外の対応は?
勤務時間外の緊急対応は、警備会社とか、管理会社の緊急センターで対応するんだから、通勤に変更しても大して変わらないんじゃない?
これも普通に出てくる、現実的な意見です。
警備会社は法律で25分以内に駆け付けることになっています。
ただし警備会社は設備の警報が鳴った場合などに限るので、住民さんの「ちょっとしたこと」には対応できません。管理会社の緊急センターも同じです。
住み込みと比べればサービス低下と言えますが、果たして許容できないレベルでしょうか?
管理員さんなら、いつでも居てくれるという安心感があるし、夜中でもお願いしたら対応してくれるから
「安心・安全」はモノを売るときのキラーワードだと聞きます。
「安心感」という感情を価値観の最上位に置くと、理屈では説得が難しくなります。
しかし根本的に、管理員さんの厚意に依存している安心安全は、長続きしません。
時間外手当は支払うにしても、24時間拘束されているに等しい心理的プレッシャー。旅行にもいけないと言います。
用事があったのに、なんで管理員さんいないの??
いや、日曜日だから普通に休日なんです。
自由に出かけることも出来るんですよ・・・
住民さんの認識を変えてもらうのは、長年の習慣だからそう簡単なことではありません!
このように労働時間・拘束時間が曖昧になってしまう環境で、最悪のケースでは訴訟に至った事例もあるのは有名でしょう。※リンク先は「労働新聞社」の住み込み労働判例。有料記事のため、タイトルだけ見てもらっても、労働時間をめぐる訴訟が珍しくないことが分かります。
最近の「住み込み管理人」の傾向
私の経験上、住み込み方式のマンションは着実に減っています。
これまで3件「住み込み→通勤」に変更したことがありますが、その逆は起こりません。
そして、今も住み込みを続けているマンションもありますが、今の管理人さんが退職したらどうなるか・・・?
しょっちゅう、通勤方式に変更したらどうだ、という話題は出ています。
通勤方式に変更したら何か変わる?
冒頭で紹介したオロオロ日記では配属するマンションを何度も変わっていますが、現場では退去と入居、ハウスクリーニングやリフォーム、現場の引き継ぎ、これらを同時進行でやるのでものすごく大変だと思います。
新しく採用した人がマンションに合わない場合でも、通勤方式に比べて「じゃあに交代しましょう」とは簡単に言えないんですよね。
人選が難しく、管理員の交代がしづらいというのが3つ目の問題です。
高齢の住民さんにとって、24時間管理員さんが居るという安心感は、何物にも代えがたい、という思いが強いようです。
いくら、管理員さんは24時間拘束しているわけじゃないんですよ・・・・と言ってもです。
だから何年かかけて、管理組合から住民さんに広報して浸透させることから始めます。
今の方が退職したら通勤に変えましょうね、と。
そしていざ、通勤に変えてみたら‥‥意外にすんなり、問題が起きたことはありません。
管理員業務費や住居分の水道光熱費が安くなるし、住居部分を集会室やトランクルームに改造するなど有効活用ができます。
マンション管理員オロオロ日記
昭和な雰囲気の管理人さんとその奥さんの住み込み体験記で、ちょっとダークな経験談をギュギュっと詰め込んでいるせいかちょっと極端な気もしましたが、これを読んだら本当に管理員さんって大変なんだなあと思うはずです。
あと、登場してくる関西人のイメージが悪すぎます(笑)
チンピラみたいなフロントマンとか、ゴロツキみたいな住民とか、こんな無茶苦茶な人ばっかりじゃないよ!と弁護しておきたい。
ひとついいエピソードがあって、大型の台風が来たときに、管理員さんと住民さんが強力して、落下しそうなパネルを撤去する作業をして、協力してくれた全員に感謝状を出した・・・・という話がありました。
立場を超えて一致団結して乗り越えるというのは、ちょっと違うかもしれませんが、私たちフロントが理事会と一緒に難しい総会を無事に終えたときに感じる達成感に似ているかもしれません。
ちなみに、協力の貢献度に応じて謝礼金に差を付けたとか、関西っぽいオチがついてたのが気になったけどご愛敬でしょう。
そして管理員さんが最後に退職されるとき、住み込みから通勤方式に変わることが決まっている・・・とも書かれていたので、やはりこの本の中でも「時代の流れ」が起きているんだなあと思いました。
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