管理員の造反

造反

管理員は管理会社が直接雇用して派遣している、管理会社の職員です。

中には他社からの派遣、つまり管理会社の「協力会社」の場合もありますが、いずれにしても「管理会社側の立場」である点は同じです。

ですから管理員としての基本的な考え方は、会社のために行動することであり、その職務として、管理組合や住民さんのために働くことです。

しかし、これまで幾度となく管理員の「造反」を見聞きし、経験したことがあります。

親しい存在になりすぎて

住民と親しくなるほど管理組合側に寄り過ぎて、管理会社としての立場を忘れてしまうケースです。

役員から、ある作業を依頼された場合に…

役員
役員

この件は、管理会社さんでやってもらえませんか?

う~ん…契約外だし、手間と時間がかかりそうだよなあ。
即決するのは難しいけど無下に断れないから、考えて返事しなくては…

管理員
管理員

これくらいのこと、サービスでやってあげたらいいじゃないですか?

自分がやるわけでもないのに、勝手なこと言って!

なぜか管理組合側の立場から、意見を言って加勢する人。

立場を見失っているんじゃないか?と感じるのは、「住み込み管理員」にその傾向が強いようです。
でもしっかりと管理会社としての意識を持っている人も多いので、一概には言えません。

雇用を守るために

管理員の定年は、昔は一律で「原則65歳」でした。特別に延長しても2年くらい。
しかし最近では人材の確保が難しくなり、70歳くらいまで雇用を延長することも珍しくありません。
それでも一応制度としての「定年退職」は今もあります。

私がまだ新入社員の頃に担当したマンションの管理員で、定年退職が近づいている人がいました。

着任のあいさつの時から態度は冷たいわ、当たりがキツいわ、「めちゃくちゃ嫌われてる…!」とビビったものです。

意味が分からず落ち込みました

その後、何度も顔を合わせても、膝突き合わせて話そうとしても、全く打ち解けず。
会社やフロントへの不満を延々聞かされたり、嫌がらせのようなこともされました。
今にして思えば、管理事務所から足が遠のくように仕向けていたんでしょう。

その管理員が一番熱心だったのは、理事長や住民に対しては別人か?というほど親切で、同時に会社やフロントの評価が下がる情報を流すこと。

管理員
管理員

会社は何もしない!
フロントは顔も出さない、使えない若造!
自分が居るから、このマンションが維持できているんだ!

暗にこうアピールしているようです。

そして、誰が呼んだのか、当たり前のように理事会や総会にも出席します。
自分のいないところで話し合われたり、物事が決まるのを嫌ったのでしょう。

しまいには勝手に他の管理会社から見積もりを取っていることまで判明。
定年の65歳が間近に迫っていたため、自らの雇用を継続することを条件にして、あちこちの管理会社に声をかけていたのです。

私も管理員と打ち解けることを諦め、新人ながら理事会とコミュニケーションをとって信頼を得ようとがんばっていました。
そうこうしているうちに理事長が交代し、「親・管理会社」の方が理事長に就任しました。

ファクトに基づいて公平に判断する方だったので、管理員の情報だけに左右されることはなく、造反も未遂に終わり、雇用延長せず定年で退職することが決定
見積もりは管理員の独断専行で、管理組合は預かり知らないようでした。

引き継ぎには非協力的で最後まで抵抗していましたが、無事に新管理員に交代。

その後は新管理員・フロント・管理組合がお互いの領域をしっかりと守りつつ、連携して協力しあい、これまでがウソのように色んな改善の提案も出来て、それを受け入れてくれて、私にとって最高の担当マンションの1つになりました。

連携がうまく行けば、フロントも管理員も能力を発揮できます。

管理組合が受け入れて評価してくれれば、さらにもっと引き出せます!

管理会社変更の本当の動機

先ほどのように管理員が管理会社を変更を企てるのは、実は珍しいことではないかもしれません。
逆に、私が管理会社変更の相談を受けた事例です。

理事長
理事長

管理会社を変えようと思っているので、見積もりの相談をしたいのですが…

見積もりする前に、管理会社を変更しようと考えた動機や問題点などをヒアリングします。

理事長
理事長

今の管理会社は~~~でーーー、この前は×××××でーーー

管理会社の対応に不満はあるようだけど、変更するほどかな?

不満の前に、管理会社への敵対心ありきだな…

管理会社の変更には、かなりのエネルギーを使います。
それなのに前向きな熱意というか、主体的に動いているように感じませんでした。

理事長
理事長

今の管理員さんを引き継いでほしいのですが、大丈夫ですか?
管理員さんがこのマンションのことを全て知っていますから。

管理員さんをそのまま引き継いでほしいという要望は、よくあることです。
本人と雇用条件が折り合えば、引き継ぐこともやぶさかではありません。

管理会社側としては、管理員を引き継ぐことにはメリットとデメリットの両方があります。

~~管理員を引き継ぐメリット・デメリット~~
メリット・マンション設備、住民を熟知している
・募集、採用、教育などの手続き省ける
管理開始時がスムーズ
手間とコスト削減
デメリット・管理のスタートが管理員が主導になりがち
・新しい取り組みに協力しないことがある
・交代したくても容易ではない
新しい管理会社・フロントの特色を出せない
問題点があってもすぐ対応ができない

管理員に面談してみると、管理組合の事情はそこそこに、自分の雇用条件を強く気にしているのを感じました。

もちろん雇用条件は重要なので気にするのは当然ですが、そこは程度の問題です。

そして話しているうちに「待遇が以前より悪くなった」「定年を過ぎていて退職を迫られている」という個人的な事情が明らかになってきます。

ああ…さては、自分の保身のために理事会に色々吹き込んだんだな…
きっと理事会は管理員を相当頼りにしているから、情報を信じているんだろうな。

隠せない本音が…

このように管理員が中心人物だと確信したとき(私の個人的な)判断と対応は2通りです。

1.「管理員は引き継ぐが雇用は1年に限る」と期限を決める
2.最初からお断りする

もっとも「雇用の期限を1年」とした時点で候補から外されてしまうのですが。

せっかく新しく受託するからには、会社や自分の特色を活かしたい!

そう意気込んでいるので、それを妨げる懸念があるなら、飲めない条件なのです。

なぜ造反が起きる?

このような問題が起きる前提には本人の資質はもちろんありますが、管理会社の統制の問題もあります。

フロント、会社、管理員の間の信頼関係が崩れていて、管理員が現場で孤立している場合にこのような造反が起こっていると感じます。

雇用条件、労働環境、会社の対応への不満、フロントとの相性・コミュニケーション不足…

現場を管理員まかせにして足が遠のくと「造反」の下地が出来上がってしまいます。
(これは自戒も込めて…)

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