最近の新築マンションでは、ペット(犬猫)の飼育が可能が主流になりました。
国土交通省の調査によれば、2000年頃の竣工マンションを境に、ペット飼育を認める方が過半数を超えています。
しかし1999年以前竣工のマンションではペット禁止の方が多く、あとから「飼育可能」にルールを変更するのは簡単ではありません。
多くのマンションで起こる「ペット問題」は、解決が非常に難しい、いや、生き物に関わる問題だけに解決不可能と言っても過言ではありません。
完全な解決ではなく、どこで折り合いをつけることが出来るか、それを考える方法を考えなければならないでしょう。
ペット問題がなぜ発生するのか
1999年以前のマンションには「ペット飼育禁止」のルールがあるのに、どうしてペット問題が怒るのでしょうか。
- 販売会社がペット禁止を知りつつ「飼育できる」と説明して販売した
- 入居者が禁止を知りつつ飼育した
多くはこの2つのパターンです。
前者は証人も証拠も無く、本当に販売業者がセールストークで「飼ってもいいですよ」と言ったのかどうか、真偽を確かめようがありません。
後者はルール違反を知りつつ、こっそりと飼育しているのが発覚した場合。
事情は何であれ、管理規約に違反していることに変わりはありません。
このとき、管理会社や管理組合は、苦肉の策で「現時点で飼育している一代限り、飼育を認める」という妥協案を決議する事例が多いです。
これは「いい加減な売り方をした販売業者が悪い」と「悪者」を作ることで納得が得られやすい方法です。
「一代限り許可ルール」を決めるだけでは問題は解決しない
一代限りの約束が守られていれば、犬猫の寿命から考えると20年ほどでペットは居なくなるはずです。でも現実には居なくならず、むしろ増えることすらあります。
- 白かった犬が、ある日から黒くなります(飼い替えている)。
- 子犬・子猫を生んで増えます。
- 一時的に預かっていただけのはずが、いつまでも預かっています。
子どもから、このマンションはペット禁止なのに、どうして飼ってる人がいるの?どうしてウチは飼えないの?と聞かれて・・・・
説明が出来なくて、すごく困りました。
・・・・子どもの教育にもよくないですね。
とにかく、様々な理由があって、一代限りのはずのペットは徐々に増えていきます。
円満に解決する方法は無い~どちらかが譲歩する
正直に言って、ペット問題は触れたくない問題のひとつです。
なぜなら、これまで円満に解決した事例を一つも知りません。
だから、全員が納得できる円満な解決策を提示する自信もありません。
先ほどの「一代限り」は問題の先送りであり、ペット禁止派に一定期間(それも数年以上)の我慢を求めることだから、円満解決とは言い難いと思います。
どちらかの意見が譲歩する道しかありません。そしてその譲歩は、住民さんが決めることです。
理事会も同じ住民だから争いは好まない
基本的に 執行部である理事会 VS 違反ペット飼育者 という構造になってしまいます。
でも、理事会といっても同じ住民です。
理事会の中にも「違反ペットを飼ってる人」「ペット飼育に寛容な人」「規約に厳格でペット飼育に否定的な人」など、その意見は決して一枚岩ではありません。
それにも関わらず理事会としての判断と対応を迫られるわけですから、酷な話です。
生き物のことですから、簡単に白黒を決めることもできません。
- 「規約を守らせる」という決断は、ペットを手放させることになる
- 「規約を変えて飼育を許可する」という決断は、反対者に譲歩を求めることになる
アレルギーがあって、ペット禁止と聞いたからマンションを買ったんだよ
今さら家族同然のペットを手放すなんて、出来ません!
アニマルセラピーが定着して、ペット飼育可能が普及しているこの時代に。
まさか捨てろというの?
うちも飼いたいけど、ルールを守ってガマンしているんですよ。
今の状況では、ルールを守っている方が損しているように感じます。
これらの意見に板挟みになり、結論が出せなくなります。
そもそも理事会は「ペット問題を解決するべき」と発案した当事者ではなく、総会などで出た発言やクレームから始まることが多いです。
更に理事会内の意見も統一されていないので、1つの案を押し通して結論を出すことを難しくしています。
にもかかわらず、仮にペット飼育に寛容な方針を打ち出すと「理事会が規約違反を見過ごすのか!」と批判が飛んでくるのだから、大変つらい立場だと思います。
理事会内の少人数ですら円満な意思統一が難しいのですから、生半可な覚悟では取り組める問題ではありません。
なぜ「ペット禁止」の意見が出るのか
すでに飼っているペットを排除することは、現実的な対応ではないと思います。
それが1件だけならまだしも、複数飼っている方が居るなら不可能でしょう。
たしかに、訴訟でも起こせば管理組合が勝つのかもしれません。
でもペット問題のほとんどが「迷惑行為」に起因しているため、全てのペット飼育者を対象に訴訟するのは非現実的な対処になってしまいます。
- 館内で抱っこしない、リードを着けず歩かせる
- 糞尿を処理せず放置する
- 鳴き声がうるさい(飼い主がいないとき吠え続ける)
- ベランダでブラッシングして毛が飛ぶ
- 廊下・玄関周りが臭い
- エレベーターで同乗しても遠慮しない
こういう迷惑行為が目に余るためにペット禁止!という声が大きくなります
たしかに、ペット飼育禁止なのに飼育すること自体が規約違反であり迷惑行為とも言えます。
でも一方で、周囲に気を配りマナーを守って飼育しているため、大きな問題に発展していないマンションも存在します。
このことから言えるのは、マナー違反の飼育者が自分たちの首を絞めているということです。
もう一度、仕切り直してきちんと管理して再スタート
ペット禁止のマンションの理事会で、ペットのマナー違反が話題にでます。
すると「どれだけペットがいるのか調査しよう」とか「総会で話し合おう」という意見が出るので、必ず確認するようにしています。
ペット問題の円満な解決事例を、残念ながら知りません。
もしかしたら住民の中でわだかまりが残るかもしれません。
それでも最後までやりきる覚悟を持って取り組んでください。
そう確認して、問題の着地点を模索することから始めます。
最終的にどこで着地させて解決と見なすのか、あらかじめゴールを想定しておきます。
「何となく話し合う」は問題をいたずらに大きくして迷走します。
もちろん、訴訟も辞さない覚悟で徹底的にやるというのもアリですが・・・
思いつきで、現状調査・意識アンケート・話し合いを行えば、住民の期待値や問題意識だけ大きくなり、結論を出せずにウヤムヤにしてしまうと、理事会に対する失望につながります。
最終的な着地点(例)
<基本方針> 現存しているペットの飼育は認め、これ以上増やさないことを絶対ルールにする
「一代限り」のルールが曖昧にならないように、管理を徹底します
- 飼育者から・・・・・写真付きの飼育届と誓約書を提出する
- 非飼育者から・・・・飼育していない誓約書を提出する
- ペット飼育名簿を作成する
- 各掲示板に「飼育一覧表」を掲示する(掲示することはルールで定める)
- トラブルは飼育者本人が解決し、原則として管理組合は関与しない
- 飼育者は月額〇〇円を管理組合に支払う
5番に関して色んな見方があるかもしれませんが、解決を理事会の責任にするのは重すぎるため、あえてルールに入れました。
6番は、ペットがいるため清掃等で余計にに掛かる経費もあるだろうということと、少しでも不公平感を埋めるためです。
まとめ
ペット飼育禁止から飼育可能に方向転換する、または既にいるペットを排除するのは、相当ハードルが高いことです。
最悪の場合は訴訟に発展することも視野に入れて、覚悟を持ってこの問題に取り組まなければいけません。
理事会としてどこを着地点としたいのか、あらかじめ想定しておかなければ迷走する恐れがあります。
「一代限り」のルールが崩れてしまったマンションでは、仕切り直して、これ以上なあし崩しでペットが増えてしまわないようルールとシステムを作り、これを最終解決にする。
どうしてもペット飼育を解禁したいなら、それは理事会ではなく飼育者の有志が提案することです!
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