いままで多くのアンケートをやってきて、わざわざアンケートじゃなく理事会で決めればいいのになあと思うことが多々あります。
アンケートが好きな管理組合は多いのですが、文案作成~印刷配布~回収~集計~結果周知まで、管理会社としては手間がかかる仕事になります。
それでも有益だと思えばこそ、アンケートをする・しないは管理組合の意思をできるだけ尊重しています。
これまでその手助けをしてきましたが、アンケートの功罪に関する記事を書いて「あのアンケートは成功だったな」「アンケートはやらない方が良かった、失敗だったな」と振り返ることが出来たので、今回はその中でもアンケートが成功(だったと私が思っている)事例を3つご紹介します!
①携帯電話基地局誘致アンケート
以前、携帯電話基地局の誘致について、思わぬ反発の矛先が管理会社に向いて不快な思いをした、ということを記事にしました。それを教訓に、同様の事案があったときに実施したアンケートです。
携帯電話基地局の誘致は、たとえ理事会が賛成していても、総会で反対者を押し切って通す議題ではないと考えています。
そこでメリットやデメリットを整理して、事前に賛否の意向を確認するアンケートを実施することにしました。最初から、反対意見が出てくるようなら総会は止めよう、と考えていました。
アンケートサンプル 携帯基地局
集計してみたところ、やはり予想通り反対意見が出てきました。
賃料が安すぎるでしょ!100万円以上なら考えてもいいけど!
見た目が悪くなるんじゃない?建物にもいい影響与えないよね。
大規模修繕のとき、防水工事の邪魔になるでしょ。
ペースメーカー付けているから「電磁波は安全」と言われても不安だな。
理事会では全員が賛成で、アンケートの半数以上は「賛成」だったので、総会に提案すれば可決することは可能だったかもしれません。
しかし反対が約30%あり、その反対意見の内容の多くは主観的な理由だったので、議論したり説明したりしても納得が得られるものではないと感じました。
理事会でも当初の予定どおり「反対者が一定数いる以上、年間数十万円のために遺恨を残すことは得策ではない」と結論を出し、提案は取り下げて総会は開催しないことにしました。
きっと総会を開催しても紛糾して、多数決で決めることにはならなかったので、無駄な総会を開催せずに済みました。
②管理員の勤務時間変更
一般会計の収支が赤字になっているマンション(規模は30戸ほど、築12年くらい)の事例です。
収支の赤字を解決する課題に直面
駐車場の契約台数が少なくなり収入が減る一方で、年数とともに修理費が増えていく、悪循環の入り口にたたされた状況でした。
色んな経費削減を実行しても追いつかず、少しずつ繰越金を取り崩していたため「管理費を上げなければいけない」という意見も出始めていました。
規模が小さいマンションにも関わらず、管理員がフルタイム(週6日・39時間)で勤務しているため、管理員業務費が大きな負担になっていることは明らかでした。
そこで理事会に管理員の勤務時間短縮と金額(案)を数パターン提示して、検討してもらうことにしました。
理事会でも意見が割れた
たしかに、うちのマンションの規模で今の勤務時間は長いと思うよ。
でも年配の方は、管理員さんに安心感を求めているんじゃない?
小学生のいる家庭だって、下校時間に管理員さんがいると安心だと思うよ。
清掃は午前中で終わってるみたいだし、1日いてもやることないですよね。
安心感を求めるのは、管理員さんの役目じゃないような・・・
管理費が足りないなら、値上げすればいい。
管理員が毎日夕方までいるのが、このマンションのステータスだと思うよ。
年金暮らしの人もいるし、これから積立金も上がるでしょう?
管理費まで値上げするのは厳しいんじゃないかしら。
理事会でもこのように考え方が違い、その場にいない世代や家族構成の気持ちまで推し量る意見がでていては、1つの案に絞れるはずもありません。
そこで、一般会計が困窮している現状を周知することも兼ねて、管理費を上げるか、勤務時間を変更するか、勤務時間を短縮するならどの案がいいか、短縮する場合にどんな心配や不都合が考えられるか、ということをアンケート調査しました。
すんなり結論を出せて、更にプラスアルファの効果も
理事会では「アンケート結果に従って、単純に多数決で決めましょう」と合意していたので、アンケート結果ですんなり1つの案に絞り込むことが出来ました。
総会でもほとんど説明する必要もなくスムーズに決議できたので、成功例だと思います。
更にアンケートでは、防犯面を不安視する声が出てきたので「浮いたお金で防犯カメラを増やしてはどうか」「管理員さんがいない夕方に、有志で子供の見守りをしよう」など、住民さん側からアイデアや提案も出ました。
管理組合の自主性が高まるきっかけになったことも、思わぬ副産物になりました。
③ベランダの劣化調査
タイトルだけ見ると「何でアンケートでベランダの劣化調査をしなければならないのか?」と思うかもしれません。
築12年経っていて、そろそろ大規模修繕工事の準備を始めようとしているマンションの事例です。
大規模修繕が近いのに話が進まない
総会では大規模修繕の話題は出る、でも理事会メンバーは毎年入れ替わるので「自分たちの代ではやりたくない」と消極的で先送りにしようとする。
修繕委員会を立ち上げようにも全体的に関心が低く、積極的に手を挙げる人もいない。
まず住民の意識を高めて、建物に関心を持ってもらうところから始めないと、理事会が交代するたびにリセットされて話が進まないな・・・・
そう考えて「自宅のベランダの状態を調べてみてください」というアンケートを実施してみました。
本当の狙いはベランダの調査ではなく、建物に目を向けて関心を高めてもらうことでした。
アンケートサンプル ベランダ調査
普段見ているようで見ていない
築12年も経っていると、全くの無傷ということはありません。
ひび割れ、塗装の剥がれ、タイルの欠けなど、ベランダの中だけでも結構あるものです。
普段は何気なく使っている場所でも、アンケートで「さあ見てみましょう」と言われると、ベランダに限らず、建物全体が気になり始めて少し関心が高まるようになりました。
少しずつでも動き出す
アンケートの回答率は64%・・・・もうちょっと欲しいところでしたが、回答者の70%がなんらかの「劣化」を報告し、50%以上は「大規模修繕工事は必要」と回答したので、半歩前進したと思います。
そしてその2年後(築14年目)に大規模修繕工事を迎えることが出来ました。
回答数には少し不満は残るものの、住民さんの意識が変わるきっかけになり、2年越しの大規模修繕工事のキックオフになったと前向きに受け止めて成功例に入れておきます!
ついでに
以前の記事で、管理会社変更結果の評価アンケートも成功部類に入ると思います。
理事会主催アンケートなので私の成功事例とは違いますけど、新しい気づきもあり、いいアンケートだったと思います。
逆に失敗事例はこちらの記事です。
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