強風で飛ばされた破片が車に被害を与えてしまった~使える保険は?規約で判断するのが重要!

台風

瞬間最大風速が24mを超える大型の台風による事故のお話しです。

5階のバルコニーに置いていたタイヤが強風であおられ、「隔て板」に衝突して破損させました。
この破損した破片がまた風で飛ばされて落下し、隣のマンションの駐車車両のフロントガラスを破損させるという事故が起きました。

これって一体誰の責任でしょうか?加害者は?被害者は?
そして誰の、何の保険を使えばいいのでしょうか?
その判断と処理には、管理会社・保険代理店の知恵と、何よりも判断基準となる管理規約が重要です。

火災保険の「風災」でしょうか?

そもそもの原因は自然災害である「台風」です。
では、火災保険の「風災」が適用されたのででょうか?

最強クラスの台風でした

・・・ちがいました。
火災保険で補償を受けられるのは、建物が被害に遭った場合です。
隣の車のフロントガラスの破損は、火災保険の補償の対象になりません。

住民さん
住民さん

でも、バルコニーの隔て板は建物の一部だから、火災保険を使えるのでは?

確かに火災保険を使える「可能性」があったのですが、使いませんでした。
その理由は後ほど・・・

施設賠償責任保険?

施設賠償責任保険は、建物の管理が原因で起きた事故を補償するものです。

確かに建物の一部である隔て板が落下して破損させた事故ですが、破損したことについて建物の管理上に問題があったわけではありません

使えるとすれば「取り付けがグラグラしているのを知っているのに放置していた」「割れているのに直していなくて、ついに強風で飛ばされてしまった」という場合は、管理上に問題アリということで、施設賠償責任保険の対象になる可能性が高いです。

ということで、これも違います。
建物管理者である管理組合に責任が無いので、適用することはできません。

車両保険?

フロントガラスの修理に限っていえば、アリです。
被害者本人の車両保険を使うわけです。もちろん加入していれば、の話ですが。
台風による飛来物による損害は、車両保険の対象になります。

でも被害者が納得しないので使えませんでした。

被害者
被害者

お宅のマンションのタイヤが壊した破片が原因だろ?

なんでウチの車両保険を使わなきゃいけないんだ

まあ、そう言いたくなる気持ちは分かりますよね。
普通の物が飛んできたのとはちょっとワケが違いますからね。

理屈でいえば、何が飛んで来ようと関係ないから車両保険使ってください、で押し通す方法もあるんですけど。
車両保険を使えば翌年の保険料も上がるし、何とかマンション側に責任を取らせようとする気持ちは理解できました。

代理店と相談して、個人賠償責任保険を使うことにしました

個人賠償責任保険は、入居者の過失により、第三者に損害を与え、損害賠償の責任を負った場合に補償するものです。

今回のケースでどんな過失あったのかというと・・・

使用細則の「禁止事項」

  バルコニー等に緊急時の避難の妨げになるような物品を放置し、又は工作物を設置すること

  • バルコニーは共用部分(専用使用部分)である
  • タイヤをバルコニーに置いていた
  • タイヤのような大きなものは避難経路の妨げになるので使用細則で禁止
  • 使用細則に違反して置いた物が隔て板を壊したのが原因なので、個人に過失がある

このように、管理規約(使用細則)に違反していた「個人の過失」があったという理屈を考えました。

台風が原因とはいえ、規約を守って、バルコニーにタイヤなど置かなければこのような事故は起きなった。
そこに個人の過失があるので、入居者本人が損害賠償責任を負う、というわけです。

事故の関係者のまとめ

  • 被害者
    1. 管理組合・・・・隔て板を壊された
    2. 自動車所有者・・・フロントガラスを壊された
  • 加害者
    1. 入居者・・・・規約に違反してタイヤを置いていた

この理屈で保険を申請したところ、フロントガラスも、バルコニーの隔て板も、どちらも入居者の過失が認められ、個人賠償責任保険を使って修理することが出来ました。(だから火災保険の出番はありませんでした)

事故の処理は被害者と加害者の感情、そして管理規約がポイントに!

記事は要点をかなり絞って書いているので、とてもスムーズに事故処理が行われたように感じると思うんですけど、実際にはとても大変でした!

保険事故処理は、事務的な処理「だけ」で進めることは出来ません。

被害者と加害者、それぞれの「感情」があります。

双方の感情を納得させなければ、示談書のサイン拒否のように泥沼化することもあります。

期待を持たせる説明、責任追及、過度な要求など、言動には慎重にならなくてはいけません。

代理店と一緒に知恵を出し合って、この理屈で行きましょう!と解決策に辿り着くのは、異業種のコラボレーションのようでちょっとした達成感を味わえる瞬間です。

事故が起きて保険を使おうとする時、責任の所在の根拠を確定するため、規約を確認することがとても大事になるというお話しでした。

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