専用庭の使用方法~トラブルを避けるために気を付けたいこと

庭

専用庭はベランダと同じ共用部分で、専用使用部分です。
ベランダと異なるのは、多くの場合が有料であることや、1階に限られること、比較的自由度が高くて「自分のもの」という意識が強いことだと思います。

とはいえあくまで共用部分ですから、自由度の高さと制約の線引きでトラブルにならないように気を付けたいです。

ベランダに付属する設備と使い方

①バーベキュー、花火

規約・細則では、共用部分での火気の取り扱いを禁止しているのが一般的なルールだと思います。
だからバーベキュー・花火も認めない、とする管理組合が殆どではないでしょうか。

1階住民さん
1階住民さん

せっかくの庭だから、年に1~2回のバーベキューや花火を認めてほしいな

こういう要望は何度か聞いたことがあります。

心情的には分かりますし、管理組合のルールで認められればいいのですが…

火気禁止と言っても、ベランダの喫煙を認めたり全面禁止だったり「禁止の程度」にも差があります。
結局のところ、火災の恐れ以上に現実的な問題が起きるのは「臭い」や「騒音」ではないでしょうか。

いくら火の始末をきちんとしても、臭いと音は、どんなに気を付けても防ぎようが無いですよね。

空気の汚れに悩む洗濯物を干す人のイラスト(排気ガス・煙草の煙)
室内や洗濯物への臭いなど、周囲への影響があります

ちなみに僅かですが、バーベキューを認めているマンションの事例もあります。

  • 事前にバーベキューの予定日時を管理組合に届け出る
  • 管理組合がお知らせして、周囲の方は洗濯物を干さない、窓を閉めるなど対策(協力)する
  • 予定時刻を守り、後始末と苦情への対応は、届出した入居者が責任をもって対応する

このようなルールで運用している事例では、苦情も聞いたことがありませんし、お互いの配慮や協力関係が根付いているようです。
ただしこれは最初からあるルールですし、利用者もマナーを守っているから成り立つのであって、後からルールを変更して「バーベキューを認める」という合意を得るのはハードルが高いのではないしょうか(想像ですが)。

②庭木の管理

最近のマンションは専用庭の細則が整備されていて「日照や風通しに支障が出る植物の栽培を認めない」など禁止事項がありますが、昔のマンションにはそのような細則がありません。

植林・植樹のイラスト
自由に「庭園」を造ってしまっている庭も多く存在します

ルールの無い大らかな時代に、それぞれが自由に庭を造った結果、所有者が替わって「誰が植えたのか分からない樹木」として問題になります。

口伝えで「以前の所有者が植えたらしい」と言われても、何十年も成長して立派に育って、最初から植えられていた共用部の樹木か、個人的に植えたのか、誰も確証を持てなくなっています。

伐採・剪定しようにも、誰の責任なのか、意思決定と費用負担は、という問題に直面します。

所有者が交代したタイミングで質問が来て、問題が表面化することが多いです。

竣工図に植栽計画、あるいは竣工アルバムの写真でもあれば確認できるかもしれませんが、大体の場合は「良く分からない」という結論に…。

「専用庭の中に共用の樹木があるのか?」と疑問に思うものの、率直な感想を言うと、昔のマンションでは今の常識が通用しないことは珍しくなく、一体何が正解なのか分からないので、固定観念で決められません。

ですから現実的な解決として「竣工図等に載っていない」「誰がこれまで管理をしていたか(歴代の所有者が剪定していたか、管理組合が関与していたか)」という事実を積み上げて推測せざるを得ないです。

といってもこの事実だけを突き付けて一方的に決めるのではなく、お互いに納得するよう管理組合と入居者で話し合って解決します。

その結果、個人の樹木ということになれば、樹木も含めて前所有者から譲り受けたことになります。
維持管理・撤去には費用が掛かることなので、庭の中にある樹木や物品類に関して、売買契約の前に前所有者と確認していただいた方が良いですね。

植木も生き物。

植えた方が最後まで責任を持つようお願いしたいですね。

規約・細則に違反して植えた樹木が問題になったら…

もし長年にわたって管理組合が問題視しておらず、所有者も特に隠さず樹木を植えていたとすれば「管理組合が黙示で承認していた」として、撤去の請求が出来なくなる可能性もあります
黙認も長く続けば、消極的に承認していたのと同じになることがあるんですね。

逆に「管理組合が樹木の存在を把握していなかった」「問題にしていた」場合は、現所有者が撤去して原状回復する義務を負うと思われます。(どうやって立証するかは別問題として)
もっともこの場合、現所有者は、前所有者に対して撤去費用を請求する権利があるでしょう。

いずれにしても、個別の事情によって結論は変わってくるので、白黒は単純に決められない難しさがあります。

経験上、ルールに違反していたことより「手入れをしないため虫が発生する、枝が伸び放題で対応しない」など、周囲に迷惑が及んだためにトラブルが顕在化することの方が多いと思います。

お手入れが大事

草が伸び放題で虫が発生したり、越境したりすると、周囲に迷惑を掛けます。
逆に草を全部撤去して砂地にしても、ホコリが舞い散るという苦情になります。
ウッドデッキや大型物置などを設置すると、撤去しろという話になるでしょう。

損害を与えてしまうと賠償責任を負うかもしれませんし、草刈り・防虫など日常的な管理は入居者が行わなければなりません。

③門扉の管理・経年劣化の取替

専用庭に扉があれば、これも共用部分の専用使用部分に当たります。
ですから日常の維持管理は個人負担となります(丁番や鍵が壊れた場合の交換・修理など)。

今はアルミ製が主流だと思いますが、昔のマンションでは鉄製扉もあるので、サビて腐ってしまうこともあります。

入居者
入居者

扉が腐食してきたので、交換してほしいんですが

このような経年劣化による交換費用は、誰が負担するのでしょうか?

判例 仙台高裁 平成21年12月24日

裁判所のホームページに掲載されていないようなので、弁護士さんの記事で解説されているのをご紹介します。

この判例は窓ガラスの交換費用に関する争いの事案ですが、経年劣化であっても、利用者(区分所有者)の費用負担で交換しなければならないとしています。

そして何を「経年劣化」とするかについては、「日常的な使用に伴い(これら住居を構成する部分は、そこに存在するだけで使用されているものと観念することができる。)、必然的に劣化していくものと考えられるとしています。

もうちょっとシンプルに言えば「ただそこにあるだけで経年劣化する。入居者が実際に使ったかどうかは関係ない」ということですね。

この解釈は、普通の人の感覚では違和感を覚えるかもしれません。

実際、管理会社でも判断を間違うことが沢山あります。
「窓ガラスは共用部分だから管理組合が交換する」という記事も多く存在します。

以前書いた記事でも、同じ判例をご紹介して解説したことがあります。

とはいえ、専用庭の扉を交換するのはそれなりに高額ですし、個人に負担させるのはちょっと酷じゃないかと思っています。
そこで、次のような手続きを踏むのが現実的な解決策かな…と思います。

  1. 管理組合が計画修繕として一斉交換する
  2. 軽量で高耐久など性能の高い扉に交換する(鉄→アルミなど?)
  3. 「〇〇〇号室の専用庭の扉を管理組合の費用で交換する」という総会承認を得る

判例や標準管理規約の主旨からすれば、この3つのどれかの手続きなら管理組合の費用で交換することが認められると考えます。

④大規模修繕工事の影響

足場が掛かると、専用庭は使用できなくなります。
使用できない期間の専用庭使用料金を請求しないのは合理的な判断ですし、大規模修繕工事を計画するときには忘れないように一緒に決議したいです。

駐車場にはかなり気を使いますが、専用庭のことはついつい忘れがちなので自戒をこめて。

予算額も変更しておいた方が親切で分かりやすいです。

万が一、うっかり決議から漏れてしまった場合でも、請求しないことを理事会で決議すればいいでしょう。(後で総会で説明しましょう)

施工計画が出るまで分からない場合もあるので、柔軟に対応するべきです

最後に

専用庭といっても、自由に使えず制約が多いものです。
細則に定めがあれば従うのはもちろんですが、問題になるのは大抵「細則が無い場合」や「細則を作る前に設置された樹木や物品類」です。

もし周囲に迷惑を掛けて実害が発生すれば、細則の有無に関わらず不法行為として責任を追及されるかもしれません。

細則が無い場合は今からでも細則作る、専用庭といえど判断に迷ったら理事会に相談してから実行しましょう!

原状回復は大変ですし、そんなことで争っても誰も得しません
そして日ごろの手入れが大事だと思います。

もちろんこじれる前に相談と話し合いで解決するのが一番です!


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