役員の選任に困っている管理組合が多く、しょっちゅう「他のマンションではどうしているの?」と質問を受けます。
大きく分けると次の5つのパターンに分類できると思います。
- 順番制(輪番制、当番制など呼び方は様々)
- 立候補制
- 推薦制
- 固定制
- 組み合わせ
1.順番制
部屋番号の順番に、上の階や下の階から当番が回ってきます。
玄関別やフロア別など、系統を分けて選出するパターンもありますね。
最もオーソドックスな方法で、新築時に採用されることが多いと思います。
どんな人材がいるのか人間関係も分からない内は、とりあえず順番制でスタートすることが多いです
2.立候補制
文書を配るなどして、役員立候補者を公募します。
たいていの場合は応募者はおらず、3.推薦制 や 4.固定制に向けての布石になっています。
たまに応募があるのは「組合に対する改革意識の強い方」や「変革を望む方」です。
あまりに珍しいので、どういう気もちで応募されたのか、ちょっと警戒してしまいます(笑)
3.推薦制
自分はやりたくないけど、あの人にやってほしい。
もしくは、あの人と一緒ならやってもいい、という場合など。
ちゃんと本人の了解をとってから推薦してほしいものですね。
推薦制といいながら「次の役員候補者を連れて来なければ退任できない」という、恐ろしいルールを作っている組合もあります。
人材不足なのは分かるけど、みんな怖がって引き受けませんよ…
4.固定制
特定の方が再任・再任で長く続ける場合。
上手くはまれば、長く続けることで理事会の方針に一貫性が出るので、安定した運営が最大のメリットでしょう。
その反対として、理事長の人柄によって、慣れ合い・独裁・排他的になる恐れがあるなど、弊害も心配されます。
5.組み合わせ
1~4の制度を組み合わせます。
たとえば定員5人の役員で「固定制:3人+入れ替わり:2人(順番・立候補・推薦)」のように、一定数が入れ替わり続けることで、新たな人材の発掘をします。
役員選びのルールにはお決まりのパターンがある
役員の選び方には、マンションの歴史とともに一定のパターン・法則があるように思います。
<初 期 ~ 順番制>
まだマンションがオープンしたばかりで、人間関係も何もない状態です。
選ぶ根拠がないので「とりあえず順番制」でスタートすることが多いでしょう。
この順番制が機能し、組合の運営に問題が生じていないなら、いけるところまで続けてみるのがいいと思います。
自動的に役員が決まるのは、理事会にとって役員選びに頭を悩ます必要が無く、負担が軽減されます。
次の候補者もいつ順番が来るのか分かっているので、心の準備ができます。
ところが2巡目~3巡目に入り、築20年過ぎたころになると、賃貸が増えたり高齢化が進んで「色んな事情」で役員ができないという人が現れて、順番制が崩れ始めます。
管理組合との間に確執がある人、滞納者など、役員として相応しくない方も混じる場合もあります。
<中 期Ⅰ ~ 混在期>
順番制が崩れるために止むを得ず再任する「4.固定制」や「2.立候補制」など、色んな選び方を試す時期に移行します。
ここで人材選びにめちゃくちゃ苦労します。
忙しいとか、病気とか、介護とか、色んな事情で断られます。
総会が近づくと候補者選びに何か月もかかって理事会に重い空気が流れ、憂鬱な時期になります。
<中 期Ⅱ ~ 順番制に回帰>
役員選びに行き詰まることで、同じ人が何年も再任することに不公平を感じ始めます。
特定の人に負担が偏るのは良くない!
公平に順番で役員をやってもらう方がいい!
このように、再び仕切り直しで順番制に戻そうという意見が出ます。
しかし中期Ⅰで「役員を断る」という前例と実績ができてしまっているため、以前のような素直な順番制は機能しなくなっています。
順番制は一度崩れると、元に戻すことは非常に難しい…不可能かも
順番が来ても辞退したり、管理組合からの呼びかけを無視して返事も寄こさなかったり、理事会に全く出席しなかったり、順番制と言っても形骸化するケースが非常に多いです。
<円熟期 ~ 組み合わせ方式>
これまでの変遷から、次のようなポイントに集約されます。
- 順番制は維持したいものの、辞退者が続出してしまう。
- 役員は組合員みんなで公平に務め、特定の人に負担が偏らない制度にしたい。
- 無理な順番制を継続して、管理組合の活動を停滞させるわけにはいかない。
そこで数名が再任しつつ、数名は順番制で強制的に入れ替える組み合わせ方式を導入します。
もちろん順番制で入れ替えると、出席しなかったり返事も寄こさない人も混じってしまいます。
でも、それは織り込み済みです。
これは私見ですが…
順番制を採用する以上、名前だけの役員が混じってしまっても、順番制の宿命(コスト)として受け入れなければならないと考えます。
冷たい言い方かもしれませんが、辞退を認める順番制は、順番制ではありません。
※特別な事情がある場合はもちろん例外です
しかし、現実問題として理事会の定足数を満たす人数を集めなければ成立しません。
そのため、規約を改正して役員数の増員も考える必要があります。
なり手がいなくて困っているのに増員なんて矛盾しているようですが、苦肉の策です。
結局どういう選び方がいいの?
最初は順番制でスタートして、限界が来る前に、早い段階で組み合わせ方式に移行するのがベストな方法じゃないでしょうか。
どんな選び方にするにしても、「役員就任は断ることができる」という前例や、雰囲気を作らないこと。これがとても大事です!
余談ですが・・・
私は管理組合の人事に一切口出ししないのが信条です。
管理会社の立場として、やってはいけないことのひとつだと思っています。
「選ぶ方法」の事例紹介やアドバイスはしますが、管理組合に問題意識を持ってもらい、自主性を尊重したいからです。
それに管理会社から「役員になってください」と頼んでも、簡単に断られます!(役員が居なくて困るのは管理組合なのに・・・・)
今まで挙げた方法以外で、これはうまくいく!というやり方があれば教えてほしいです。
大げさじゃなく、すべてのマンションの悩みの助けになるのではないでしょうか??
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