アンケートの失敗事例の紹介は、適切な組合アドバイスが出来なかったという自己反省でもあります。
成功例などに書いたとおりアンケートが失敗するのは「なんとなく」「目的を定めず」が共通点です。
今回は自分の過去の傷ともいえるアンケートの失敗事例をご紹介します。
①ペット飼育の「意識」調査
ペットの記事でも解説したように、非常にセンシティブで難しい問題のため、安易なアンケート調査は控えるべきです。
理事会の雑談の中で、なにげなく出た会話がキッカケでした。
このマンションはペット禁止の規約なのに飼ってる人、けっこういますよね?
どれくらいいるんでしょうか?
私も飼いたいけどガマンしてるんです。
「飼育可」のルールに変更したいと思ってる人、何人かいますよ!
調べてみたらどうでしょうか?
理事長が「じゃあ、取り合えず実態を調べてみようか」と即決したことからアンケート実施。
質問の内容は2項目
- ペットを飼っていますか?種類と数は?
- ペット飼育に賛成ですか?反対ですか?
ここでの最大の問題は調べた結果をどうするのか?について、理事会としての意思や方向性が定まっていないことでした。
案の定、賛否が入り乱れた回答が集まり・・・・・
強硬な反対意見の人。普段は心にしまっていた不満が噴出します。
「家族です」と愛犬の写真をつけて回答する人。
2匹も3匹も飼っている人。
反対意見を説得してルールを変える勢いは理事会に無く、ただ「今はこれだけの違反ペットがいるんだね」「3匹はまずいよね」「反対意見の人が多いから飼育可にするのは無理だ」「これ以上飼育しないと誓約書を出してもらおう」で終わってしまいました。
そのままマンションは再び平穏を取り戻したのですが「何のためのアンケートだったんだ??」と疑念を抱いた方がいたのは間違いないと思います。
もし「ルールを変えたい」と思うなら、それは理事会の発議ではなく、有志が立ち上がって提案するべきです。
「理事会として反対意見と議論して、まとめるつもりで取り組みますか?!」
ということを確認することにしています。
②結露アンケート
これも理事会の中でふとでた発言がキッカケでした
うちの結露、ひどいんだよね。カビが生えて壁紙が剥がれてくるんだ。
もしかして欠陥住宅なんじゃない?
欠陥住宅なら、他の部屋でも同じかもしれないから、調査したらどうだろう。
ゴールを設定しないで失敗する典型パターン
その役員さんのお部屋の中を見せてもらうと、確かに結露が酷く、カビが生えていました。
でも部屋全体を見渡してみると…
家族5人の洗濯物を室内干ししていますね。
寒いから換気扇回してないんですか?除湿器も無し?
大きな水槽で魚を飼ってますね。あ、観葉植物も趣味なんですね。
結露が発生する条件がいくつも揃っていました・・・・
とはいえ、断熱の不良などの可能性が全く無いとも言えません。
そしてアンケートを回収してみると、うちはひどいとか、うちは何ともないとか、ただただ規則性のない個別の事実が集まるだけです。
何のために意見聴取するのか?
結露は基本的に専有分の問題です。理事会として何か手を打つのか、何が出来るのかを考えていませんでした。
アンケートで答えてくれたことに対して、フィードバックが出きませんでした。
解決策を提案するとか、もし欠陥住宅を疑うなら専門家の調査、弁護士に相談、売り主と交渉・訴訟まで視野に入れる必要があります。
しかし実際には個別の事例を集まっただけで、方向性を見出せませんでした。
③中庭の景観改修アンケート
館内の廊下から見える場所にある、小さめの中庭。陽当たりや水はけが悪いため、苔が生えて荒れ放題でした。芝生も枯れてしまって、どう見ても貧相です。
入居者から話題に出たわけではなく、私が気になっていたので造園業者から数パターンの提案見積もりを出してもらい、理事会に提出しました。
人工芝案と石庭案の2案で、材質の違いによって20~50万円くらいの費用でした。
理事会では議論が活発に・・・
見積もりや現状を見て、初めて酷い状態だと気付いた人もいたくらい、最初は関心が薄かったようです。
そもそも建物本体が傷んで実害が出ているわけではなく、美観の問題です。個人によって価値観に差があるのは当然のことでした。
中庭って言っても、通りがかりに一瞬しか目に入らないしなあ…
そこに何十万円もかけるの、無駄だと思うな。
中庭、荒れてたっけ?全然気にしてなくて知らなかったな。
気づいている人、いるのかな?
前から汚いなあと思ってたんです!
毎日前を通るし、シンボル的ないい庭に変えたい!
石庭で夜にライトアップしたら素敵だと思う!
人工芝がシンプルだし、手もかからなくていいと思います。
耐用年数どれくらいなのかしら?
女性は興味を持ってくれたけど、男性は気にしていない人が多いのかな?
やっぱり失敗するのは「何となくアンケート」
理事会で意見が割れたので「アンケートを取ってみよう!」ということになりました。
もうこれまでの失敗事例のパターンからお分かりかもしれませんが、感性の問題であって、理事会で意見が割れるんだからことは、当然住民の中でも意見は割れます。
アンケートを受け取った住民側の立場からすれば、文書だけじゃ何が問題なのか事情もよく分からないし、「さあ、どれにする?」なんて唐突に聞かれても困りますよね。
アンケートの回答も割れたため、「理事会だけでは1つの案に決められない」と棚上げになってしまいました。
アンケート結果は参考にした上で「理事会で協議して選択肢を〇〇に絞ったので、総会に提案して決議します」と進めれば、うまくいったかもしれません。
大切なのはリーダーシップと責任の所在だと思いました。
おまけ
失敗というか、毒にも薬にもならなかったアンケートを思い出しました。
騒音の苦情が多い・・・・よし!アンケート!
騒音の苦情があまりに多いので、マンション全体でみんな悩んでいるんじゃないか?ということでアンケート調査をすることになりました。やってはいけない典型例の「何となくアンケート」です。
騒音問題はマンションにつきもの。
性調査すれば色々出てくるのは当たり前ですよね。
でも騒音問題は個別の感情問題ですから、感じ方の違いによって結果も違います。特別な傾向が掴めるわけでもありません。結露のアンケートと同じです。
ただ色んな事例を収集するだけになってしまいました。
個別の騒音問題に対して、理事会が積極的に介入して解決に動けるわけがありません。
ただ色んな事例が集まってきたので、「騒音の事例・時間帯・伝わりやすい音の種類」などを詳細に書いた「騒音注意マニュアル(事例集)」を配布することにしました。
予想外にも一定の効果はあったようですが、マニュアルといっても特別なものではなく、よくある生活騒音の注意文です。
アンケートなんてせずに、最初から普通に注意文書を配れば良かっただけじゃないかな
まとめ
成功・失敗の経験を振り返ってみて
私なりに学んだ教訓は・・・・
- アンケートの目的を明確にしよう。
- 調査結果を何に使い、どういう結論を想定しているか、考えておこう。
- 本気で問題を解決するには、最悪のケース(訴訟などの争い)まで視野に入れて計画を建てておこう。
- 「安易に調べてみよう」は新たな火種や問題を生みだし、理事会への失望を招くかもしれない。
アンケートは「住民の意見を聞くツール」ではなく、その先に「問題解決の目的があって、それを想定しておかなければならない」ということを学びました。
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