エレベーターリニューアル工事~【準備編】実施のタイミングと業者選び・見積もり

エレベーター

とほほ管理員の「マンションつらいよ日記」さんにインスパイアされて、管理会社フロントの立ち位置から見たエレベーターリニューアル工事について書いてみようと思いました。

実際に住まわれている方のリアルな目線で書かれています。
エレベーターリニューアル工事の現実が詳しく分かると思います。

誰も書かない 「エレベーター更新工事期間中にエレベーターが使えなくなる問題」の解決方法 : とほほ管理員の「マンション つらいよ日記」
ある理事長さんから要望があったため、「エレベーター更新工事」に関する記事の再整理を行ない、読みやすくしました。「エレベーター更新工事 その1」この大作連載の中で、一番多くの時間が割かれているのが、「ひとつの建物に、1台のエレベーターしかないから、工

まず全体工程を7つに整理してみる

エレベーターリニューアル工事を検討する全体の工程を、次のように分類しました。

  1. いつごろリニューアルすればいいのか
  2. どこの会社に頼めばいいのか
  3. いくらくらいかかるのか
  4. どんな工事をするのか
  5. 着工の前の準備、工事中の注意点は
  6. 工事が終わってから
  7. その他のポイント

ざっくり7つに分けて考えてみましたが、長くなるので今回の記事は1~4まで。

エレベーターリニューアル工事は、マンションの寿命の中で通常1~2回しかやりません。
頻繁にあるものではないので、そう多くの事例を実体験したフロントはいないんじゃないかと思います(私の場合で5~6件。検討中も含めると7~8件ほどです)。
今回の記事の情報が「すべて」ではないことをご了承ください。

1.いつごろリニューアルすればいいのか

メーカーのリニューアル基準

リニューアル工事が必要になるのは、メーカーが部品の製造をしなくなるからです。

住民さん
住民さん

メーカーの都合で、言いなりになってやらされるようで納得できない!

こういう意見が出る心情は理解できます。でも、どんな家電や自動車などでも、永遠に部品を作ってくれるわけではありませんから仕方がないことです・・・・。
「もし部品が壊れたら修理できないかもしれない、だから新しい機種に入れ替えてくださいね」というメーカー側の言い分です。

リニューアルの時期は、メーカーの基準では「20~25年」と言われます。
私の感覚では、実際には「25~35年(以上)」だと思います。
国土交通省の長期修繕計画ガイドラインでも「30年」に設定していますから、メーカーの基準は短すぎるというお墨付き?
もっとも、「製造終了が早いメーカー」「長持ちさせるメーカー」がありますけどね。

だいたい部品製造が終了する2年くらい前までに案内文書が届くはずです。
でも製造しなくなるだけで、ストックしている部品も一定量あるはずで、そこまで焦る必要はありません。なんなら万が一の場合は、中古部品を使ってでも何とか直してくれます。

地方都市の場合、故障が起きてから空輸等で部品を調達するため、1~2日間のエレベーター停止の可能性があります。
逆に言えば、そのリスクを許容すれば限界ぎりぎりまでリニューアル時期を延ばせる・・・と言えるのかも。

限界ぎりぎりなんて、管理会社の立場からおススメできることではありませんが、そういうマンションもあるという情報はお伝えします。

メーカーさんは物凄く嫌がるので、なんとか早くリニューアルしてください、と頼みにくると思います(笑)

リニューアル工事の時期は、資金的にもっとも厳しい

築25年~30年ごろは、2回目の大規模修繕工事や給排水管工事と時期が近い・重なるので、資金的に非常に厳しい山場を迎えます。
この厳しい山場をどう乗り越える計画を立てるか、早めに提案できるか、フロントの腕の見せどころでしょう。

当然、検討するのが遅くなればなるほど、借入金や大幅な積立金の値上げを選択肢から排除出来なくなります。

プレゼンテーションのイラスト「ホワイトボード・グラフ・男性」
足りない予測だとしても、早めの予測と情報開示がその後の合意形成のため重要です

2.どこの会社に頼めばいいのか

必ずしもメーカーに限る必要はありません。複数社の比較検討は可能です。

第一候補は既存と同じメーカー

まず第一候補は、言うまでもなくメーカーですね。
たとえ現在、メンテナンスを独立系に頼んでいるとしても、メーカーはリニューアル工事は請けてくれます。メーカーとしても、この機会にメンテナンス契約を取り返したいでしょう。
 例)三菱、日立、東芝、OTIS、フジテック、その他諸々。

メーカーAからメーカーBに変えることは、基本的に無理だと思ってください。
最初から断られるか、丸ごと交換に近いので高額になります。

第二候補は独立系メンテナンス会社

メーカー以外、メンテナンス専門の独立系でも、リニューアル工事を請けます。
全国展開しているジャパンエレベーターサービス、SECエレベーターの2強でしょう。
それ以外では、規模は小さくなりますが地場の独立系メンテナンス会社も含まれます。

独立系でリニューアルすると、メーカーのメンテナンスは受けられません。
メーカーと縁を切るつもりで判断しましょう。

第三候補は隠し玉

メーカーでもない、独立系でもない会社があります。
特定のメーカー専属の下請けとして、製造・設置・リニューアル工事を担当する会社です。

普通に検討しているだけでは登場しません。
メーカー側から「独立系にやらせるくらいならここを使ってください」のような形で出てくることがあります。レアです。

第三候補は全てのメーカーで登場するのか、確認できていません。
某メーカーからそういう選択肢が出てきたこともある、という位の情報です。だから「隠し玉」です。

見積もり合わせ・プレゼンで競わせる

メーカーしかだめ、今のメンテナンス会社じゃなきゃだめ、という決まりはありません。
色んな会社から見積もりを取るのは普通のことです。
大抵は、メーカー + 独立系(ジャパン・SEC・地場系)で競わせます。
見積もり合わせをして、更にリニューアル後の「メンテナンス契約」も含めてプレゼンさせます。

見積もり項目を揃えるのは無理です

メーカーの見積もりは「一式●●●万円」「出精値引き●●●万円」という形式で出てきます。
内訳を提示しろと言っても、まず出ません。強気です。
単価が分からないから正確な比較は出来ませんから、総額で比較するしかありません。
では何を比較すればよいか?のポイントを「4.どこまでやるのか」に書きます。

各社の作る見積もり書式はバラバラで単純な比較は困難です

3.いくらくらいかかるのか

最低限の部品を交換することを「制御リニューアル」と呼びます。
かごやレールなどの主要な構造は流用し、主に電気系部品やロープなどを入れ替えます。
その最低限の中でもどこまでやるのか?仕様によって金額が違います。
また、どんな構造か?何階建てか、油圧式かロープ式か、非常用か人荷用か、等によっても変わります。
つまり構造で大よその標準価格が決まり、そこから仕様を詰めていって、ようやく実行金額が出ます。

フルスペックの仕様を選択すると数百万円ちがいます!

経験で言えば、特殊な要素を除くと1台あたり500~700万円くらいの幅に収まるかな?(最近ちょっと上がってる気もする)

階層施工時
築年数
用途工事費
1台当たり
8階建33年人荷用600万円
10階建34年人荷用730万円
10階建30年人荷用525万円
13階建38年人荷用600万円
14階建28年非常用1500万円
リニューアル工事費の金額実例

4.どんな工事をするのか

詳しい施工内容はメーカーのホームページが詳しいので、簡単にポイントだけ書きます。

通常行われる制御リニューアルでは、前述の通りかごや扉やレールなど流用します。
大半の部品が新しくなるとはいえ、少なからず残る部品があります。
後で「やった」「やってない」「最初から対象外」「聞いていない」を防ぐため、施工範囲の〇×表を作るように依頼しましょう。

既存不適格の対策工事

エレベーターの法定検査の報告書を見てください。
「既存不適格」と書いていませんか?

「改正された今の法律に適合していない」という意味で、違法ではありません。
しょっちゅう法改正されて基準がどんどん厳しくなるので、既存不適格を解消することにこだわりすぎないほうがいいですよ。

耐震対策工事

何度も基準が改正されています。「〇〇年耐震」というように、大きな震災があると基準がリニューアルされます。
どこまでの耐震対策を行うのか、どんな耐震内容なのか、費用対効果を相談して決めましょう。

戸開走行保護装置・停電時自動着床装置・地震時管制運転装置

  • 戸開走行保護装置・・・・扉が開いたまま運転しないための安全装置。
  • 停電時自動着床装置・・・停電発生時に最寄り階まで運転して自動停止。
  • 地震時管制運転装置・・・P波(初期微動)を感知して、最寄り階に自動停止。

必ずしもこの3つ全てをやらなくてもいいです。
見積金額を見て、必要性について議論しましょう。
他にも既存不適格になる項目はありますし、近いうちに新たな項目が追加されるかもしれません。

オプション工事

既存不適格でもないし、機能的にも問題はないけれど、あると便利だったり見た目を向上させる、グレードアップです。
これも挙げだすとキリがないので、個人的なおススメ項目だけご紹介します。

  • マルチビームドアセンサー・・・閉じるドアに手をかざすだけで、挟まれることを防ぎます
  • 壁と床の張り替え・・・・・・・かご内のデザインを一新します
  • 天井照明LED化・・・・・・・蛍光灯より断然明るいです
  • 乗り場のドア・枠張替え・・・・各フロアの乗り場の枠や扉にシートを張ります
  • バリアフリー対策・・・・・・・鏡や手すりを取り付けます
  • かご内防犯カメラ・・・・・・・お好みで

これで大体の見積もり比較はできます

制御リニューアル基本工事 + 既存不適格解消工事 + オプション工事

この3項目に分類して、なにが見積もりに含まれるのか整理すれば、ほぼ同じ仕様の見積もりになります。「総額」での金額比較が可能になりますが、完全な仕様統一は多分無理です。

今回は施工の時期、見積もり依頼先、およその工事費用、工事の内容の4点について書きました。

個人的経験に基づくので、もっと詳しい情報、最新情報もあるかもしれません。

次回は工事の準備、着工から完了、完了後、その他のポイントについて記事にします。

後編はこちらへ続きます

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