エレベーターのリニューアル工事の主な目的は、性能・機能の維持向上です。
そして同時にかごの内装、照明、バリアフリー、三方枠など、デザインを一新するチャンスでもあります。
リニューアル工事におけるデザインの選び方
エレベーターのリニューアル工事では内装等のデザインが一新されるので(注:オプション工事扱い)、管理組合がデザインを決定します。
理事会や修繕委員会、時には住民アンケートなどを基にして意見をまとめます。
ただし色や素材は台帳やカタログ、大きくて30センチ程度の見本で選ぶため、イメージしていたものと完成後にズレが生じる恐れがあります。
そのズレを少しでも無くすため、エレベーター会社はデザインのシミュレーションを作ってくれるのですが、今のところは「紙で印刷」が主流です。
見本は小さいので、実際に貼ったり塗ったり面積が大きくなると印象が変わるので注意が必要ですよ!
ここの部分の色を変えたらどんなイメージになりますかね?
イメージを作り直して持ってきます!(2週間以上かかったりする)
数パターンの比較をしたくてイメージ変更を頼むと何日も掛かってしまい、スムーズな議論ができず、満足なデザインの検討を難しくします。
20~30年に1度のイメージチェンジなのに「思っていた仕上がりとなんだか違った…」という結果になってしまっては残念すぎます!
主要メーカー5社+独立系2社のホームページは?
リニューアル後のイメージは「紙で印刷したものを確認するのが主流」と言いましたが、エレベーター各社のホームページには必ず「リニューアル」のコンテンツもあります。
では、その中でもデザインに関する情報はどれくらい充実しているでしょうか?
主要メーカー5社と独立系2社のホームページから「リニューアル工事のデザインに関する情報」を調べてみました!
「主要メーカー5社」とは「東芝エレベータ、三菱電機ビルテクノサービス、日立ビルシステム、日本オーチス・エレベータ、フジテック」のことを指し、国内の90%以上のシェアを占めるそうです。
「独立系2社」は、全国的に展開している「ジャパンエレベーターサービスホールディングスと、エス・イー・シーエレベーター」を取り上げました。
2021年6月現在における各社の情報およびリンク、私の個人的寸評をまとめたのが下の表です。
社名・リンク | 寸評 |
東芝エレベータ | 床・壁・天井など部位ごとに並んでいて、一目で分かる。しかし、完成イメージがあれば分かりやすいのにパーツがバラバラに展示されているだけで残念。 |
三菱電機ビルテクノサービス | 「パッケージ」ごとにデザインが並べられている。あらかじめ用意されたパターンに限られるので、組み合わせを変更した場合のイメージがしづらい。 |
日立ビルシステム | リニューアルの情報は網羅されているものの、意匠は色見本が数点あるだけ。かなりガッカリ。 |
日本オーチス・エレベータ | デザイン見本の1つ1つがPDFファイルで分割されている。文字・アイコンも小さい。 |
フジテック | 「新規設置」のシミュレーターの完成度に比べてかなり寂しい。「デザイン一新」のページのはずなのにボタン周りしかない。カタログをダウンロードすれば、かろうじてイメージを掴める。 |
ジャパンエレベーターサービス (独立系) | 情報が充実しており、デザインのシミュレーションを簡単な操作で作れる。アングルが一方向しかない、手すりや副操作盤など付けられないところだけ残念。 |
エス・イー・シーエレベーター (独立系) | かご内のデザインシミュレーションが可能なのは良いが、乗り場の三方枠を変更できない、選択肢が少ない、完成イメージが小さくて見づらいところなど改善点あり。 |
独立系2社がデザインのシミュレーターを提供しているのに、メーカーはリニューアルに力を入れているように感じられません!もっと頑張ってほしい!
フジテックのデザインシミュレーターがすごい(でも新規設置だけ)
リニューアル部門は散々ですが、フジテックの新規設置のデザインシミュレーターは完成度も自由度もすごいです。これを一般に公開してくれて、自由に使えるのが嬉しいですね。
かご内・三方枠・オプションのデザインはもちろん、視点変更、走行、音声までシミュレーションできます。
デザインを作るのが楽しくて、しばらくこのページで遊べました。
これならイメージと完成形のズレがなく、満足するでしょうね。
独立系にとってリニューアル工事は、工事とメンテナンス契約の両方を獲得する営業チャンスになりますから、力を入れている理由があるのでしょう。
一方、メーカーとしても独立系にメンテナンス契約を奪われないよう守らなければなりません。
ひと昔前、それほどメンテナンス契約にこだわっていないと感じる時期もありましたが、近年はメーカーも熱心にメンテナンス契約を守ろうという意気込みを感じます。
「新規設置の商談用」としてこれだけ高度なシミュレーターを一般提供できるのですから、リニューアルの部門でも今後、ユーザー目線でストレスなくデザインを考えられるシステムを期待します!
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