前回に引き続き、エレベーターリニューアル工事について後半です。
5.着工の前の準備、工事中の注意点は
エレベーターの制御リニューアル工事では、連続停止が6~7日間ほど続きます。
完全に24時間エレベーターが使えません。
さらにオプション工事でかごの内装など改修するなら、2~3日の半日停止(夜は使える)が加わります。
合計すると1週間~10日のエレベーター停止で、少なくとも日中は全く使えません。
(1棟に2台のエレベーターがあれば、1台ずつ作業するので問題にならない)
長期間の停止に備えて住民の事情調査する
エレベーターが使えないと生活できない人もいるんじゃないだろうか?
歩行が困難な人は?
車いす利用者は?
高齢者などで介護サービスを利用している人は?
家族がおらず、周りの助けが必要な人は?
とにかくエレベーターを使えないことで困る人がどれくらいいるのか、どんなことが心配か、どんな不便が起こるのかを、把握しなければなりません。
住民の状況が把握出来たら、管理組合として出来る対策はあるのか、情報を整理します。
出来ることは出来る、出来ないことは出来ない、と割り切らなければ進みません。
階段昇降の補助業者に委託
住民対策は、エレベーター会社ではなく、基本的に理事会が考えなければなりません。
エレベーター会社や管理会社に相談すれば、提携している「補助業者」を紹介してくれる可能性があります。
このサービスを売りにしている会社は少ないので、自力で探すのは難しいかもしれません。
補助サービスでは、夜間を除く日中にスタッフを常駐させ、入居者の階段昇降のお手伝いなどします。
費用は人件費+階段移動用リフトのレンタル代です。
配置する人数・台数・時間によって変わりますが、10日間の工事×1名・リフト1台なら20万円~30万円ほどです。
受けられるサービスは下記のようなものです。
- 買い物などの荷物の持ち運び
- 戸別にゴミを回収、ゴミ出し
- 集合ポストの新聞や郵便物を部屋まで配達
- 自力で階段を上り下りする人の介添え
- 階段移動用リフトを使って入居者を目的階まで移動
理事会で出来る対策
住民の助け合いで出来ることもあるので、色んな立場からアイデアを出し合いましょう。
集会室トイレを開放 | 部屋までトイレが間に合わない方のため、誰でも使えるように工事中は解放します。 |
階段の踊り場にパイプ椅子を配置 | 踊り場に椅子を置いて、途中で一休みできるようにします。 階段に手すりが無いなら、工事の前に優先的に設置します。 |
各フロアに介助担当者を配置 | 介助が必要な方の相談窓口担当者を決めます。 補助業者さんに頼みづらい人、頼みたいときに頼めないこともあります。 |
ホテル、別宅に避難をお願い | どうしてもエレベーターがなければ生活が成り立たない方には、仮住まいに退避していただきます。 仮住まいの費用は、基本的に個人で負担をお願いします。 |
6.工事が終わってから
新しくなったエレベーターだから何の不満も無いかというと、意外にそうでもないです。
30年近く使っていたエレベーターがガラリと変わるので「慣れ」の問題が起こります。
リニューアル後に出てきた問題(実例)
- ボタンを押しても反応が遅い、扉が閉まってから動き出すまでが遅い
- ボタンを押してからエレベーターが起動する前に、安全確認の処理が行われるため、動作がワンテンポ遅れる(らしい)
- ボタンが凸凹して押すと指が痛い
- 視覚弱者のために数字や文字が凹凸型になります
- ボタンの周りがステンレスのプレートになって汚れが目立つ
- 見た目重視で「ステンレスヘアライン」という高級感のある材質が使われます。しかし手あかが付きやすく、小まめに清掃しないと手あかが目立ちます。
- ボタンまわりのステンレスのプレートの「ビス頭」が露出している
- 独立系でリニューアルした場合に「ネジの頭(+)」が丸見えの場合があり、見た目が悪い。メーカー施工ではこのようなことは見たことありません。
トータルすれば良くなっているのは間違いありません。
「悪いところ」と言うほどではない気もします。
個人的にはボタン周りにステンレスヘアラインを使うのは本当に止めてほしいです。
色んなメーカーの営業さんにお願いしてきましたが、フロントの一意見など通りません…
見た目をよくするつもりだろうけど、手あかが付きすぎて汚い!
頻繁に手を触れる場所に使う素材じゃないだろ!?
①汚れは手あか(脂)なので、中性洗剤とクロスで拭き取ります。
②そのままだと乾いたあとに拭き跡がムラになります。
③ステングロス(ステンレス専用のツヤだし)を、乾いたクロスで、ムラなく塗布するような感じで拭きます。
安全装置が過敏に反応
某メーカーのリニューアルで、エレベーター内にカメラが取り付けられました。
かご内の異常な動きを自動で監視するそうです。
異常を感知すればブザーが鳴って、自動的に最寄り階に停止する安全装置なのですが・・・・
①靴ひもを結びなおそうとしたとき
人が急にしゃがんだ!具合が悪いみたいであります!
ブザー鳴らして止めます!
②子供同士でじゃれあったとき
暴漢が人を襲っています!危険であります!
ブザー鳴らして止めます!
③後の人のために1階に下ろしたとき
無人なのに勝手に走行してます!異常走行であります!
ブザー鳴らして止めます!
このような誤発報が頻発したため、何度もクレームを入れて感知レベルを最低に変更させました。
さらに「急にしゃがんだり、不規則な動きはしないでください。降りたら1階に下ろさずそのままにしてください。ブザーが鳴って止まってしまいます」と張り紙をしました。(格好悪い・・・)
当時は最新の機能なのに情けないと思いましたが、
数年前の話なので、今はきっと改善していることでしょう
7.メンテナンス契約も見直し
リニューアル工事後のタイミングで、メンテナンス契約の見直しもセットで行いましょう。
単純に契約料金の減額交渉でも構いません。
減額交渉の根拠は、点検回数を減らすことが出来る、故障頻度が下がる(点検や出動の削減)など。
これは、業者選定・見積もりの段階で行うことで、ランニングコストですから業者選定の重要なポイントになります。
工事費だけで決めてはいけないということです。
元々フルメンテナンス契約の場合
リニューアル直後はほとんどの部品が新品になりますから、そうそう壊れません。
「最初の2年はPOG契約、3年目からフルメンテナンス契約に変更」という条件で交渉してみましょう。(最初の2年分がPOG料金なので格安です)
管理組合にとても有利な条件です。
実際に応じてくれた事例もあります。
難しいかもしれませんが、ダメ元でも交渉してみましょう!
元々POG契約の場合
引き続きPOG契約を継続でもいいのですが、フルメンテナンス契約への切り替えも視野に入れ、両方の見積もりを取得しましょう。
そして次回のリニューアルまでのトータルコスト(メンテナンス料金+修理費)を比較して、POGとフルメンテナンスのどちらがお得か比較してみましょう。
私はフルメンテナンスを推奨しています。
POG契約は安いですが、部品交換の都度、理事会・総会で審議するのはとても手間と時間がかかります。
エレベーター会社にお任せで、万が一の故障でもすぐに交換できるるので、管理会社的にも理事会的にも負担が少なく安心です。
最後に
エレベーターのリニューアル工事はそもそも選択肢が少ないし、知識も情報も圧倒的に足りないし、エレベーター会社の方が強気な印象があるしで、歯がゆい思いをすることが多いです。
でも1社単独指名にせず、2社、3社で競わせることで、より有利な条件で交渉出来ます。
ここで書いたことを「参考」にして、エレベーター会社との交渉に臨んだり、工事の準備に活かしてていただけると嬉しいです!
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