騒音?それとも虐待?~隣人・管理会社・管理組合の関わり

電話通報

今回は私が体験したトラブルのひとつ。これを騒音トラブルと言うべきではないかもしれません。

住民さん<br>(通報者)
住民さん
(通報者)

近所の部屋から子供の泣き声が聞こえるんです。

親が怒鳴る声も聞こえるし、尋常じゃないと思うんですよ。

周囲のお部屋の住民さんが心配して、管理会社に連絡が入りました。

これを「騒音の苦情」と捉えていいのでしょうか。
それとも「児童虐待の訴え」と捉えるべきなのでしょうか。
当時の私には判断が出来ませんでした。

訴えの内容をそのまま受け止めれば、事態は深刻に思えます。
通報者は実際に「音」を聞いて「虐待」と判断しましたが、私はその「音」を聞いていません。

答えが分からないまま、管理会社として何が出来るのか、判断を迫られたという話です。

児童虐待の定義

厚生労働省によると、児童虐待は次の4つの定義に分類されます。

  • 身体的虐待
  • 性的虐待
  • ネグレクト(育児放棄)
  • 心理的虐待

今回の通報内容からすると、身体的虐待か心理的虐待なのか…?

該当の住民さんに連絡

自分の判断が曖昧なまま、虐待を疑われている住民さんに連絡を入れました。

でも「虐待していますか?」なんて聞けるはずもありません。

泣き声が聞こえるという人がいるんですが・・・

住民さん<br>(泣き声の原因)
住民さん
(泣き声の原因)

ええ、泣くことはありますよ。でもウチの子はそういう子なんです。
虐待でも疑っているんですか?

そう答えられると、それ以上、何とも言えませんでした。

通報者には、そのまま結果を報告。
でも、そんな報告で「そうだったんですね」なんて納得するわけもなく。

双方の言い分に挟まれて

一方は「普通の育児と教育の範囲」と言う。
一方は「異常な泣き声で虐待に違いない、聞いているだけで辛くていたたまれない」と言う。

第三者、まして管理会社のフロントに対応できる話ではなかったのです。
それを分かっていませんでした。

だからそれからも、何度も両方から話を聞いて、その結果を相手に伝える、ということを繰り返してしまいました。

解決できるはずがないのに、間に入ることで「期待感」を持たせ、いら立ちを募らせる原因になってしまいました。

そして、個別面談もしました。
お互いの言い分を聞くと、それぞれがもっともに聞こえ、どちらが正しいとか間違っているとか、判断が出来ませんでした。

そして、何の進展も解決もないまま、ただ日数が過ぎていきました。

警察の介入と退去

警察に通報し、理事長も含む大きな騒ぎになりました。
我慢しきれなくなった隣人が行動を起こしたわけです。

そして後日、当事者の一方はマンションを退去していきました。
これによって解決ではないまま、この問題は収束したわけです。

振り返ってみて

いま同じことが起こったとしても、最善の対応をする自信はありません。

管理会社に出来ることなんて、ほとんどなくて無力なんだ…

ハッキリと言えるのは、領域を超えて出しゃばっても、お互いのためにならない。
私が騒音問題に限らず、住民間のトラブルに介入することに対して慎重なスタンスをとっているのは、この経験がもっとも影響しているような気がします。

自分の力量で解決できない問題の見極めを誤ると、時に相手の人生を左右するほど事態を悪化させることになる。
相手に「解決してくれるんじゃないか」と期待を抱かせるような、中途半端な相談の乗り方、言動をしてはいけない。

そう強く思うようになった出来事でした。

また、このときの管理組合は仲裁したり、問題解決に動いていませんでした。
積極的な理事会ではなかったこともあるのですが、もし間に入っていたとしても、同じ結果になっていた可能性が高いでしょう。

振り返ってみて

あれが虐待だったのかどうかは結局分かっていません。
直接話を聞いた印象で、個人的にそういう事実はなかったんじゃないかと思っています。
でもそれは自分の主観に過ぎず、管理会社の立場で白黒を判断して、解決を図れる問題ではなかったんだと反省しています。

あのときとるべき行動は、最初の段階で公的機関への相談をお勧めすることだったのかなと考えていますが、それすら正解なのかどうか、今でも迷いがあります。


児童相談所虐待対応ダイヤル(厚生労働省HP)

「あの子、もしかしたら虐待を受けているのかしら・・・」「子育てがつらくてつい子どもにあたってしまう・・・」「近くに子育てに悩んでいる人がいる・・・」こんなときにはすぐに電話番号189番へお電話ください。お住まいの地域の児童相談所に電話をおつなぎし、専門家が対応いたします。
厚生労働省 児童相談所虐待対応ダイヤル HPから引用

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