マンション生活の困りごとがあるとき、誰に相談すれば良いでしょうか?
すぐに解決できそうな、ちょっとしたことなら管理員さんやご近所の方に。
でも管理組合の手続きに関わること、共用部分に影響しそうなこと、そもそも誰に聞けばいいのかすら分からないこともあるでしょう。
そんなふうに迷ったとき、管理会社に相談しよう!というのは大いに賛成です。
間違った判断をしてしまう前に、確認するのは大事なことですよね。
ところが問い合わせといっても、質問じゃなく要望になると話が違ってきます。
実際のところ「質問」と「要望」は境界線があいまいなことも多いので、ちょっとした例を挙げてみます。
ペットを飼いたい!でも…
たとえばペット飼育が認められているマンションで、犬を飼いたい方がいるとします。
犬を飼うこと自体は何の問題も無いので、飼育の申請があれば管理会社でも受け付けして管理組合に提出します。これはただの事務手続きです。
しかし、もし大きさ制限にちょっと引っかかるとしたらどうでしょう?
ペット飼育細則で決められた制限が体高70センチまで、でも飼育したい犬は既に成犬で73センチだとすれば?
皆さんの管理組合では、ルールはルールとして拒否するか、それとも大目に見てあげるでしょうか。
~ペット細則の例~
(飼育可能なペットの種類)
本マンションで飼育できるペットは、社会通念上一般家庭において、専ら愛玩の目的で飼育されると認められるものであり、原則として以下の基準とする。
飼育可能なペットの種類は、抱きかかえられる程度までの犬・猫(体高 50cm以内、体重10キログラム未満)及び観賞用の小鳥・魚など、一般的に室内飼育に適するものとする。但し、盲導犬、聴導犬、介護犬等は適用を除外する。
管理会社に問い合わせしたらどうなる?
入居者から管理会社に問い合わせれば、こういうやり取りになります。
犬の体高が53センチで、ちょっとオーバーしてるんですけど…
飼育しても大丈夫ですかね?
…細則に違反しているのであれば、ダメですね
心情的・個人的に「それくらいいいんじゃない」と思っても、管理会社の立場では、ルールを破ることを是とする判断はできないのを分かってほしいと思います。
管理会社を通じて、理事長に相談したらどうなる?
「マンションの困りごとはまず管理会社に相談するべき」という意見をよく見かけます。
それはそれで間違っているわけではありませんが、管理会社で判断できないことも多いし、判断しろと言われれば規約通りに判断します。
「ちょっと大目に見てあげる」とはならないのです。
犬の体高が53センチで、ちょっとオーバーしてるんですけど…
飼育しても大丈夫ですかね?
数センチくらいなら多分大丈夫ですけど、管理会社の立場では許可できませんねー
じゃあ、管理会社さんから理事長に相談してみてくださいよ
要望や困りごとを、管理会社から理事長に相談するようにお願いされることもよくあります。
理事長!住民さんからの相談なんですけど、ちょっとくらい大目に見て認めてもいいですかね?
規約に違反していると分かっているなら、受け付けの時点で説明して断ってくださいよ!
ですよねー
フロントだって、規約に違反しているけどいいでしょうか?なんて相談したくありません。
大らかな理事長なら「それくらいいいんじゃない?」とあっさり認める可能性もあります。
もしくは「理事会の議題にかけて話し合って決めよう」になるかもしれません。
この場合は、次の理事会まで1ヶ月~2ヶ月待ちになってしまうので、相談者に中間報告を入れておきます。
相談者は「こんなちょっとしたこと判断するだけで、何でそんなに時間が掛かるの!」とイライラしたり。
ルールから外れているから、色んな人が動いて、時間を割こうとしているんですけど…
理事会で話し合った結果、クレームへ
例え数センチでも、ルールはルールだから。
もし苦情があったら誰が責任を取るんだい?
私は飼いたかった犬をサイズが合わないから我慢したんです。
ルールを守る方が損するなんておかしいじゃないですか?
当事者が居ない場では予想外に否定的意見が出たりして、否決されることもあります。
理事会の結果を受けて、フロントは相談者に否決された結果を報告します。
1ヶ月も2ヶ月も待たせて、なんで許可取れなかったんですか!?
あなたが大丈夫って言ったから飼うことも決めたのに、どうしてくれるんですか!?
理事会で議論したプロセスや意見など、いくら説明してもリアルに伝わりません。
相談者も、自らの言い分や反論が出来ないまま結論が確定してしまい、不満が倍増します。
この一連のやり取りって、みんなが不幸じゃないでしょうか??
ペットのサイズについて
事例にしたので、実際にこのような相談があったらどうなるでしょうか。
規約の主旨を考えると、体高50センチや体重10キロという数字は「小型犬」の目安として明示したものです。
小型犬に限るのは、集合住宅で暮らす上で必要である「鳴き声とか威圧感とか、他の人に迷惑をかけないように」「抱きかかえられるように」という主旨のはずです。
もしただの「小型犬」と規約に書いたら「小型犬の定義は何だ」「この犬種はどうなんだ」「ミックス(雑種)はどうなんだ」と収拾がつかないので、誰が見ても分かる客観的な基準を定める必要があるだけのことです。
そもそも管理組合で毎年身体測定なんかしませんし、体重も変動しますしね。
セントバーナードの子犬を連れてきて「制限内だからいいでしょ」という話にはならないし、「チワワだけど太って10キロを超えたから手放せ」ともなりません。
管理会社は「代理人」ではない
話を元に戻して。
個人的な要望を管理組合に伝えてほしいと頼まれたとき、管理会社・フロントはただのメッセンジャーになります。
決して相談者の味方にはならないし、なれません。代理人ではありません。
だから、本気で要望を通したいなら自ら動かなくてはならない、これが鉄則だと思います。
騒音のクレーム相談も同じ
”音の問題で悩んでいるなら、管理会社に相談しましょう”
このように書いているのもよく目にしますが、基本的に同じことが言えると思います。
上下階の騒音問題など、個人 VS 個人 のトラブルの相談を受けることが多いです。
でも管理会社は実際に音を聞いたわけでもなく、仮に音を聞いたとしても、うるさいと感じるかどうか個人の感覚に左右されます。
例えば同じ足音でも、顔見知りの子ども、自分の子や孫なら?
音を出している人にも、もしかして何らかの言い分があるかもしれません。
どちらか一方の味方になったり、板ばさみになるのは、管理会社の業務ではないのです。
複数の住民に迷惑を掛けているなど迷惑行為が明らかなら、規約に則って注意喚起などの対応は出来ます。
管理会社としての関わりについて、下の記事を参照してみてください。
まとめと教訓
本当に通したい要望やクレームは、自らしかるべき場で説明・主張した方が、ぐっと説得力が増します。もし他人に任せるなら、結果も受け入れるべきでしょう。
相談を受けた側としても、見込みで楽観的に答えると、その言葉を信じて想定外に前のめりで行動をする人もいるので、安易な受け答えは禁物です!
- 相談したいことや要望があれば、自ら理事長、または理事会や総会などで説明して説得する
- フロントは「多分大丈夫」など、期待を持たせることを言うべきではない
- フロントは、規約違反と知りつつ、その判断を理事長に投げかけるべきではない
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