マンションの三大トラブル、ペット問題、騒音問題、駐車場問題と言われているそうです。
前者2つはすでに記事にしたので、最後の駐車場について書いてみます。
管理組合・管理会社は駐車場内の当事者間トラブルに関知しない
駐車場使用細則や契約書に記載されているとおり、管理組合(管理会社)は、駐車場内で起こるトラブルに関知しないことになっています。
接触事故、盗難事故、隣の車が近くて邪魔、傷つけられた、自分の区画に別の車が停まっているなど、当事者間の解決が原則です。
必要に応じて文書で注意喚起することはあっても、解決の基本原則は自分自身です。
管理組合がレッカー会社と契約している場合もありますが、レッカー移動は法が禁止する「自力救済」に当たると言われます。
管理会社に排除する権限は無いし、管理組合もレッカー移動すると、逆に訴えられるリスクすらあります。実際に訴えてくるかどうかは別として…
したがって、レッカー契約には「警告」の意味が強いと思います。
【参考】近江法律事務所~敷地内の放置車両を撤去するには
自力救済禁止が建て前ですが、実際にはレッカー排除する事例はあります。
レッカーされた側にも負い目があるのか、訴えられたというのは聞いたことないです。でも、リスクがあることは知っておくべきですね。
管理会社のトラブルは「事務処理ミス」
管理会社が関係するトラブルは「請求事務」「契約手続き事務」の2つが多いです。
会社のチェック体制が機能しているかで、発生頻度に差はあるでしょう。
仕組みがきちんとしていればミスを減らすことは出来ても、ゼロは難しいでしょう。
チェック体制が厳しければ厳しいほど、手続きが面倒・書類が多い・時間がかかるなど、利用者の利便性は損なわれます。
口頭で情報を伝えるのは楽だし速いですが、間違いが起きないよう書類でチェックするため、手間がかかるのは致し方ないところでしょう。
事例① 駐車場使用料金40万円未請求
私が前任担当者から引き継いだ物件で、決算時に、駐車場の契約台数と請求金額が合わないことが発覚しました。
遡って調べてみると数年前からズレが生じており、一人の住民さん大して請求漏れがあることが原因。
その未請求は実に40万円以上でした。
(先輩)
あ、そうなんだ。じゃあ本人に事情説明して請求してみたら?
ミスの原因は・・・
管理員は契約を受け付けしており「会社の請求担当に連絡を入れていた」と証言しています。
にもかかわらず、何らかの理由で請求金額の変更が行われなかった。
ここまでは請求処理のミス。
しかし、そこから何年も気づかなかったのは、複数のミスにです。(決算の問題でもある)
- 管理員・・・・・毎月の請求金額が変わっていないことに気づいていない
- フロント・・・・決算をまたいでいるのに、台数と請求額の差に気づいていない
- 管理会社・・・・決算書、請求書の検査漏れ
- 管理組合・・・・監事の監査責任
- 契約者本人・・・駐車場を使っているのに料金を払っていない
だからと言って「みんなに責任ありますよね」と、管理会社の立場でなかなか言えないものです。
何と言っても、ミスの発端は自分たちですからね。
本人に支払いをお願いする
電話で連絡したところ、相手も絶句です。
いきなり「40万円はらってください」ですから。
そんなの払えるわけないだろ!管理会社の落ち度じゃないか!
う~ん、当然の反応だよな・・・・
駐車場を使ってるのに、料金が引き落とされていないことに気づかない本人。
請求書や引き落とし金額を全く見ていない人もいるんですね。
とにかく菓子折りを持って、自宅にお詫びに行くことにしました。
まだ当時、駆け出しの若手だった自分ですが、前任者も上司もついてきてくれません。
胃が痛くなりながら玄関のチャイムを鳴らしたところ、意外な反応がかえってきました。
あなたがミスしたわけじゃないのに、こうやって謝りに来てくれている。
私にも同じくらいの年頃の息子がいて、それと重なってしまったよ。
これ、持って帰ってください。
涙が出る思いで受け取って、お礼ともお詫びともつかない挨拶をして帰りました。
申し訳なさと、感謝と、ホッとしたのが混じった複雑な感情です。
もし自分の親だったら、どう対応したんだろうな?と考えたりもしました。
こんな風にスパッと払ってくれることなんて、まず無いです!
会社が一部負担することもありますからね。
激レアで幸運な経験です。
事例② 解約するのやっぱり止めた
住民さんからの電話で、駐車場解約の申し入れがありました。
たまたまその日は請求書の締め日。
今日中に手続きすれば、請求金額の変更に間に合います。
正式に「解約届」を出してもらおうとすれば、請求金額の変更は来月に回されます。
そうすると、駐車場使用料は1ヶ月分まるまる引き落とされてしまい、それを翌月の請求時に相殺して返金・調整する処理が発生します。
住民さんにとっては一時的に「過剰払い」になるし、私も金額調整するのが面倒だったので、口頭で解約を受け付けて、社内の請求金額変更書類を回しました。
すると翌日。
昨日の駐車場の解約、やっぱり取り消すことにします
でも今月の駐車場使用料金をゼロに変更済みで、請求変更の締め日も過ぎていました。
それを説明して、次月の請求で改めて2か月分まとめて引き落としていいですか?と尋ねたところ…
あんたの会社は、書類も出してないのに請求金額を変えるのか!?
自分から解約の連絡してきたのに、これは罠だったのか?
便宜を図ったつもりが、完全に裏目。
私がルールを破り、書面をもらわなかったことで招いたクレームです。
それからというもの「書類なしでは一切手続きを受け付けない」ようになったのは言うまでもありません。
駐車場の解約にまつわるトラブル
駐車場の使用契約書には通常「解約は1か月前までに申し出る」と書いています。
たぶん民間の月ぎめ駐車場も同じようなものですよね。
車を廃車にしたので、解約します。今日で。
正しくは、申し出てから1か月後に解約が成立します。(細則や契約書による)
それなのに、管理員が言われるまま受け付けて、請求変更書類を本社に送ってきます。
1ヶ月以上前に解約の申し出が無かったら、解約できませんよ。
使っていなくても、1ヶ月分の料金を請求することになりますよ。
受け付け時にそのことを説明しないと!
車がもう無いのに料金を取るの、気の毒じゃないですか!?
気の毒だと思うなら、代わりに払ってあげたらどうですか?
損するのは管理組合ですよ?
「次の契約者を探す」という主旨で、解約の予告期間は必要です。
それを理解していれば起こらないミスです。(入社時の研修、引き継ぎなどで必ず説明する)
ルールをただの「決まり事」としてではなく、「何のため」まで考えていれば、このような発想にならないでしょう。
管理員さんにルールを伝えるときは「決まったこと」だけじゃなく「何のため」という目的まで説明して理解してもらう必要がありますね。
駐車場トラブルを防ぐには
規約を把握して、その通りに実行する。
これさえ守れば、事務手続き上のトラブルはほぼ防げます。
規約は覚える必要ない
丸暗記している人なんていないので「そういえばこういうケースの手続き、書いていたな」と印象に残っているくらいでも十分です。
手続きが発生したら条文を確認する。
調べて、後で回答することは許されるのですから。
書類第一主義
ペーパーレスの時代に逆行しますが、まだまだ管理組合では書面がたくさん残っています。
お堅いと言われようとも、書面で意思確認して、処理することが重要です。
証拠が残らずに痛い目を見るのは自分です。
慣れてくるほど危ない
流れが全部頭に入ると、確認を怠りがちになります。
どんなことにも、例外やイレギュラーな事例は起こります。
自分を過信していつも通りに対応すると、イレギュラーであることに気づかず、ミスにつながります。
駐車場の一番怖いところ
それは、普段はいい人、温厚な人、いつもにこやかに挨拶する人ですら、こと駐車場のトラブルに関わると豹変することです。
駐車場のトラブルになると鬼のように激高する、そんな場面を何度も見てすごくびっくりします。
料金のことなら、最終的に金銭で解決できます。
しかし例えば「空き待ちの順番を間違って飛ばした」となると代替の手段がありません。
理事長に頼み込んで、一時的に来客用駐車場を貸す許可をもらったことがあります。
あれも新人の頃で、追いつめられて必死に頼んだから、許可してくれたのかな。
いい人も鬼に変えてしまう駐車場のトラブル。
事務手続きだから、決まった通り処理すれば間違いが起きないのは当たり前。
逆に言えば間違いは許されない!
きちんと書類で意思確認することが重要ですね。
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