ブログの読者さんからご質問メールを頂戴しました。
<<ご質問の内容>>
※築年数、戸数、管理委託状況などの詳細な条件は不明です
3年ほど前に長期修繕計画を見直して修繕積立金を増額した。
最近、マンション総合保険が値上がりしたため、一般会計が赤字になった。
数年間は一般会計の繰越金で乗り切れるが、いずれマイナスになることが予想される。
管理費の増額は、修繕積立金を増額したばかりで住民の負担が大きいため避けたい。
修繕積立金に余裕があるので、総会で決議して管理費に資金を移すことは可能か?
※管理規約は標準管理規約に準拠
積立金を一般会計の財源として振り替えることは、管理規約に定められた修繕積立金の使用目的から外れるので不適切だと判断します。
そもそもの問題は一般会計の恒常的な赤字ですから、一時的に資金を補填するのではなく、抜本的な解決策を考えるべきです。
一般会計の赤字対策は?
管理費の値上げが一番シンプルな対応ですが、ご質問者さんのように「積立金を値上げしたばかりなので、負担増を避けたい」「高齢者が多くてこれ以上の値上げは厳しい」などの事情を抱えたマンションが多いことも理解できます。
そこで、組合員の負担を増やさない条件の中で対策案を考えてみました。
対策案① 管理費・積立金の比率を調整する
ご質問者の状況では、長期修繕計画の資金シミュレーションでは余裕があるとのことです。
3年前に増額したばかりなので、将来にわたって積立金に心配がないのかどうか分かりませんが、資金シミュレーションから算出して可能な範囲で修繕積立金を減額し、その分を管理費の増額に回すことで、トータルの支払額は同じままで比率を変更することは可能だと思います。
1度だけ、この方法を実行したことがあります。
そのマンションでは「2回目の大規模修繕工事、給排水設備更新、エレベーターリニューアル」が終わり、次の大規模修繕工事以外に特別の支出予定が無い、という状況でした。
様々な条件が整わなければ難しい方法だと思います。
注意点としては、長期修繕計画は5年を目安に見直すため、将来のことまで確約できません。
「積立金を値下げしても心配ない」と誤解されてはいけないし、負担額を変えずに当面のピンチを乗り切るための暫定処置であること、再び値上げはあり得ることは必ず織り込んで、組合員がそれを理解・合意しなければなりません。
対策② 支出削減可能な項目を徹底的に検討する
携帯電話基地局を誘致するとか駐車場収入を増やす(外部に貸し出し)とか、大幅な収入増加が見込めない限り、支出を削減するしかありません。
それも、変動費ではなく固定費の削減です。
たとえば安い修繕業者などを探すのも大事なことですが、毎回毎回見積もりを取って検証するのは大変な作業です。
固定費は一度下げれば効果は継続するので、こちらを優先するべきです。(家計でも同じですね)
固定費の削減については色んなサイトで語りつくされて、今さら目新しいものではありませんが…
- 固定費の削減(例)
- 管理員・清掃員の勤務時間を短縮する
- 定期清掃の回数を減らす
- リース・レンタル物件を買い取る(防犯カメラ、玄関マットなど)
- エレベーター保守会社を独立系に変更する
- 電子ブレーカーを導入して動力の基本料金を削減する
- 保険会社および補償内容を見直しする
今回は「保険料の値上げ」が背景の事例なので、保険料の値上げにどう対策するかまとめました。
保険料の値上がり対策
近年の保険料の値上がりは、多くのマンションで大きな負担になっています。
値上がりの背景をザックリと言えば、築年数の経過とともに事故の発生率が高まること、近年自然災害が多発していることが背景になっていますので、築年数の経過と共に保険料は値上がりし続けることが予想されます。
①保険会社の見直し
保険会社を変更すれば、逆に保険料が下がる可能性もゼロではありません。
複数の保険会社を取り扱っている代理店に、一括見積を依頼してみましょう。
少なくとも東京海上・損保ジャパン・三井住友の三社は外したくないですね。
更に管理組合の運営に自信があるなら、日新火災のマンションドクターという商品を試す価値があります。手間はかかりますが、査定の結果次第では最安値の保険料になるでしょう。
<<実 例>> 70戸・築30年・地震保険無し 更改前 47万円(A社) ↓ ↓ 更改後 61万円(A社) 42万円(日新火災マンションドクター:S評価)
保険の見直しについて、こちらの記事も合わせてご参照ください。
②補償内容の見直し~個人賠償責任保険を除外
近年、保険料が特に大きく上昇しているのは「個人賠償責任保険」です。
本来なら個人で加入するのが理想ですし、管理組合の補償から外すマンションも少ないながらも存在します。
個人賠償責任保険を除外することが出来れば、大幅な保険料削減になります。
いきなり除外することが難しい場合は、まず補償額を下げて、除外に向けた下地を作って段階的に進めることをお勧めします。
なかなかハードルが高いですが、管理費増額と天秤にかけながら検討すれば、不可能ではないと思います。
③補償内容の見直し~地震保険を除外
地震保険の加入率は全国平均で43%程度だそうです。
その全てが補償内容を理解した上で加入していれば良いのですが、もし「なんとなく安心」という理由で継続しているのであれば、いざという時に保険金が下りずにガッカリするかもしれません。
きちんと保険会社を呼んで、どんなケース・どんな基準でいくらの保険金がもらえるのか説明を聞いて、必要か必要でないか検討した方が良いと思います。
決して安い保険料ではありません。
④補償内容の見直し~保険金額や様々な特約
保険金額(付保割合)の減額、特約(水災、失火見舞い費用など)をどこまで除外できるか、代理店に提案を依頼しましょう。
もし付保割合が100%なら、建物が全焼することを想定した保険を掛けているようなものです。
コンクリート造のマンションで、そんなリスクに備える必要があるでしょうか?
何も要望を伝えなければ、代理店は従前の契約通りに見積もりを作ります。
だから必要ない補償が入っていたり、その逆で補償が不足していることだってあります。
保険料を下げる提案をしてほしいんでけど、どんな提案が出来ますか?
「保険料を抑えるため補償を見直して提案してほしい」と、管理組合の要望をしっかり伝えましょう。
明細も出してもらって、何の補償にいくらの保険料を支払うのか分かるようにしなければ検討できません。
代理店の知識と経験を最大限に活用して味方につけるのが重要です!
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