管理費ゼロ円マンション!~どうやって運営しているのでしょうか?

管理費ゼロ円

分譲マンションに「管理費・修繕積立金」はつきものですが、「管理費ゼロ円」のマンションがあることをご存知でしょうか?

2種類の「管理費」

まず今さらではありますが、管理費には分譲マンションの「管理費」賃貸マンションの「管理費」の2種類があります。
呼び方が一緒なのでしばしば混同されますが、性質が全然違います。

種 別支払先目 的決め方
分譲マンション管理組合共用部分の維持管理
(ランニングコスト)
㎡単価
賃貸マンションオーナー
(管理会社)
事務手数料
設備の修理等
オーナーの意向

目的や決め方は、物件により異なる場合もあります

分譲マンションの管理費の使途は、ザックリ言えば「共用部分の維持管理」という広い目的です。

ですから、物価・消費税・保険料・人件費など、様々な値上がり要素があって、黙っていても値下がりすることはまず考えられません。
だからこそみんな一生懸命、節約に努めているわけですが…

「管理費ゼロ円」の仕組み

賃貸マンションの管理費は簡単に「ゼロ円」にできます。
その分、家賃を高くすればいいだけですからね。

ところが分譲マンションでは簡単にはいきません。

インターネットで「管理費ゼロ円」のキーワードで検索しても、賃貸マンションばかりヒットしてしまいます。
いったい、どれくらいの分譲マンションでこの仕組みが採用されているのか、事例を把握することが大変難しいです。

そんな中、10年ほど前に分譲されたマンションと、これから新築で販売されるマンションの2つの事例を見つけることが出来ました。

①1階店舗部分を賃貸に出す

1階の店舗をコンビニとして賃貸に出して、その賃料を管理組合の収入とし、管理費ゼロ円の財源としているものです。

2011年竣工のマンションで、最初の5年間は賃料を保証するという、20年間の賃貸借契約を締結しています。

つまり6年目以降の賃料は下がりして、このモデルが破綻する可能性もあったわけですが、最近の売却情報を見ると今でも管理費ゼロ円を継続していました。

店舗部分を「共用部分」の扱いにして、管理組合が賃貸借契約を結んでいるのでしょうか?

物件名を出すのは控えますが、こちらの記事(建築前に書かれた古い記事です)で概要を紹介されています。

②住戸数以上の駐車場を用意して、第三者に貸し出す

敷地内に住戸の必要台数以上の駐車場を確保して、その余剰台数分を「特定の第三者」に一括で貸して、その駐車場収入を管理費ゼロ円の財源とするものです。

特定の第三者ということは、きっと企業などの大口契約先を確保しているのでしょう。
不特定多数に貸すと、契約・解約の手間が頻繁に起こるのと、防犯面にも不安がありますからね。

でも大口の契約先が1本ということは、解約されれば一気に収入が無くなるリスクがあります。
こちらのマンションはこれから販売が計画されている段階ですが、①と同じように一定期間の駐車場料金収入を保証する契約なのかな、と想像します。

考えられる特徴とリスクやデメリット

どちらも管理組合法人ではなく通常の管理組合らしく、賃貸に出す店舗も駐車場も区分所有者全員の「共有物」の扱いになっているはずです。

管理費ゼロ円に適したマンション

長期的・安定的に賃料収入が得られないとこのモデルは成り立ちませんから、「好立地で借主を容易に見つけられる(または簡単に退去しない)こと」が必要です。

また、賃料収入を全戸で分配するには戸数が多すぎてはダメです。
逆に戸数が少なすぎても、空室で収入が途絶えた時の負担が大きくなりすぎます。

「戸数が多すぎず、少なすぎず」の、中規模マンションが向いていると思います。

リスク・デメリット

私の思いつく限りですが、リスク・デメリットは次のようなものが挙げられるでしょう。

  • 賃料収入は収益事業に当たるため、収入の3割程度が税金で差し引かれる。納税のため税理士に委託する経費も掛かる。
  • 貸し出し分は共用部分なので、固定資産税として、各区分所有者が個人で支払う金額に上乗せされる。
  • 店舗も駐車場も「本来は入居者に必要ない設備」という見方も出来るので、それも含めて建築費は高くなり、販売価格に上乗せされる
  • 将来にわたって同じ賃料が続く保証は無く、値下がりや解約による収入減少の可能性がある。すなわち、その時点から管理費を負担することがありうる
  • 賃料の交渉や、テナントが退去した場合の募集など管理組合が行う(業者に委託するコストがかかる)。

もっとも購入者はリスクを説明されて、承知の上で購入するでしょうから、リスク・デメリットと呼ぶほどではないかもしれません(説明を受けていなかったら大問題になるでしょうし…)

この辺のリスクを考えず「管理費ゼロ円」だけに惹かれて購入する人は居ないと思いますが…
事例①は10年以上管理費ゼロ円を継続している実績があるようなので、こういう販売方法も、立地や条件次第で「アリ」なんでしょうね。

既存マンションを「管理費ゼロ円」に転換するには、第三者に賃貸する財産が必要になるので、まず無理でしょう。

積立金が余るくらい豊富なら、管理組合を法人化して1階の店舗を買い取って賃貸に出せば、賃料収入を得られるので管理費ゼロ円が実現出来る可能性はあります。
実現はほとんど無理なケースですね。

ですが将来の建て替え後のマンションを「下駄ばき(1~2階がテナント)」にして賃料収入を得るという手法はあり得るので、管理費ゼロになるかどうかは分かりませんが、モデルケースとして行く末を注目したいなと思います。

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