管理費等の督促~法的措置を実行する

管理会社の業務として出来る督促は、滞納者が「任意」で支払うように、色々角度を変えながら請求していくことでした。

しかし管理会社や管理組合が自力で回収が出来ないと判断したら、次は弁護士に依頼して法的措置の準備に入ります。

法的措置の判断の目安は、滞納額が大きくなったということも確かに1つのポイントですが、金額の多寡にかかわらず、滞納者とのコミュニケーションが取れなくなったら危険な兆候です。

支払いの約束を繰り返し反故にして連絡も寄こさない、こちらからの呼びかけに反応が無い(電話に出ない・督促状を無視する)という状況になれば、滞納期間や金額に関わらず要注意です。

こうなると任意の支払いは望めないため、早めに弁護士に依頼して良いキッカケだと思います。

見ざる言わざる聞かざるのイラスト
見ざる・言わざる・聞かざるに陥ると改善の見込み無し

法的措置のステップ

弁護士に依頼すると言っても、いきなり「管理費等請求訴訟」に踏み切るのではなく、段階を踏みながら、実行のタイミングを計ります。

一般的な法的措置の順序

①弁護士名で督促状を送付(内容証明郵便+普通郵便)

内容証明郵便だけなら、相手が受け取らない場合に差出人に戻ってきてしまいます。
これでは相手に内容が伝わらないため、念のため同時に普通郵便でも同じ文書を送付します。

内容証明郵便で送ること自体にそれほど意味は無く(消滅時効が迫っている場合は別)、弁護士名で内容証明郵便を送ることで「管理組合の本気度を伝える」「プレッシャーをかける」ことに大きな意味があります。

内容証明のイラスト
管理組合名と弁護士名ではインパクトが違う

この時の反応で「払う人」か「払わない人」が、最終選別がほぼ決まるでしょう。

支払い交渉のテーブルに着くようであれば、公正証書を作成して、訴訟せずに確定判決と同じ効力を得られます。

②管理費等請求訴訟

弁護士名の文書も無視するようなら、いよいよ「支払いの意思なし」が確定するので訴訟に踏み切らざるを得ません。

役員
役員

少額訴訟や支払督促の方が手続きが簡単じゃないの?

支払督促は相手から異議があれば、少額訴訟は相手が通常訴訟を希望すれば、通常訴訟に切り替わります。

弁護士に依頼すれば、最初から通常訴訟を選択すると思いますよ…

弁護士に頼まず、自分で支払督促・少額訴訟を実行するのはおススメ出来ない

裁判所に行けば、書記官が書き方を教えてくれます。細かく書類もチェックしてくれます。
ところがこの細かくに何度も泣かされました。

理事長と一緒に書類を訂正して持っていったら…

書記官
書記官

あー、この利息の日割り計算じゃダメですね。

ここの表現もダメですね。

直してもう一回持ってきてください。

前回の相談の時にそんなこと言わなかったのに!

というか、別件の案件ではこの書類の形式で受け付けされたのに!

提出するこちらが素人のせいか、チェックがめちゃくちゃ厳しい。
担当官によって指摘する内容が違うこともザラにあります。

書記官としては、不備のある書類を通すと裁判官に叱られるのだろうから、厳しいのは仕方ないけどさ…

裁判所に足を運ぶのは、1度や2度じゃ済まない覚悟で臨みましょう。
昔は経験と勉強のためと思って裁判所に行きましたけど、苦労した経験から言えるのは、専門家に任せるべきです!

③判決~強制執行

普通の管理費等請求訴訟で、管理組合が負けることは考えられません。
相手が訴状を受け取らない判決を受け取らないなど、多少の引き延ばしはあるかもしれませんが、ここまではスムーズに進むでしょう。

勝ってからがホントの勝負!

なにせ判決が下りても、回収するのが本当の目的です。
そして無い袖は振れないからやっぱり支払わないという問題に直面します。

そこで次は「強制執行」です。
車を持っていれば差し押さえの対象になり得ますが鑑定評価額が二束三文だったり、銀行口座を差し押さえようにも銀行・支店を特定しなければなりません(だいたい空振り又は残高が無い)。

強制執行が上手くいくなんてほとんど期待できず、親族まで巻き込んで支払いの交渉することもあったり、判決が下りてから回収するまでが実に大変です。

④競売

③で判決(又は①の公正証書)を得ていますので、滞納者の部屋を競売申し立てすることも出来ます。
「出来ます」と言いながら、実際には銀行の抵当権が付いている(残債が多い)、滞納額が少なすぎる等々、様々なハードルがあるため簡単に成功しません。

管理組合としては歯がゆいところですが…

そうしているうち、滞納がどんどん膨らんで長期化していくため、最終手段として「59条競売」という手段があります。59条競売については篠原みち子弁護士の解説にまとめられています。

これを読むと、分かる人にはわかる、でもよく分からない人も多いと思います。
そこで極限までコンパクトに要約すると…

  • 競売は所有権を強制的に取り上げる強力な最終手段、伝家の宝刀なので、裁判所は簡単に認めない(要件が厳しい)
  • 訴訟・強制執行など、あらゆる努力を尽くしても回収できない場合に初めて認められる

③の強制執行も、多くの場合は空振りするのでムダに見えますが、59条競売に辿り着くために必要なプロセスなんです

59条競売に関しては様々なケースの判決が出ていて今後も変化する可能性はあります。
個別の状況に応じて裁判所が判断することなので、果たして競売が有効な手段になり得るのかどうか、依頼している弁護士とよく相談して考えましょう!

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