リフォームにまつわるトラブルあれこれ~共用部の改造

改造

専有部分のリフォームに関して、最近は多くのマンションで細則を定めていると思います。

仮に細則が無いとしても、専有部分と共用部分の区別は浸透しており「勝手に共用部分に手を加えてはいけない」という認識は広がっていると感じます。

ところが昔の話になるとそうとはいかず、かなり無茶なリフォームが行われているケースがあります。

内装・間仕切りを全て撤去したところ…

等価交換のマンションでの出来事です。

等価交換とは
地主さんがデベロッパーに土地を譲る対価として、その土地に建てられたマンションの部屋を貰い受ける(土地と部屋を交換する)ことです。
多くの場合は「最上階すべて一室」など好条件の部屋だったり、複数の部屋をもらって賃貸に出したり、特別な待遇を受けます。
このような場合、販売時のパンフレットに価格や図面が載りません。

さて、問題が起きたマンションは既に築40年以上経過して、等価交換した元・地主さんも部屋を売却し、何代も所有者が入れ替わっていました。

そして新しい所有者がスケルトンでリフォームしようとしたところ…。

スケルトンとは
内装を全部撤去して、躯体がむき出しの状態のことです。
スケルトンでのリフォームでは、壁紙や床材はもちろんのこと、配管や間取りも(共用部に影響しない限り)自由に
作ることが出来るので、内装はまるで新築のようになります。
もちろん工事はかなり大掛かりで、1ヶ月以上かかるのは当たり前のことです。

本来、有るべきはずの場所にコンクリートの柱が無く、切り崩して撤去していること発覚しました。

元・地主が勝手に柱を解体して、間取りを変更していたものと思われます。

…が、証拠も履歴も何もありませんし、あくまで推測の域を出ません。

等価交換の場合、「地主」という立場だったことから、賃貸マンションの大家さんのように「すべて自分の持ち物」という感覚に陥る方もいます。

管理組合内で相談したところ、新所有者に落ち度も責任も無く、元・地主がとんでもないことをした、という結論に至り、管理組合の費用で復旧しました。

法的には、特定承継人である新所有者に原状復旧を求めることも出来たと思いますが…

あまりに昔の話で気の毒だ、ということで、この結論になりました。

50戸なのに49戸

築50年以上のマンションで、竣工時の資料では「総戸数50戸」と記載されているのに、現在の部屋数は「49戸」しかなく、議決権数も49です。

隣り合った2戸を所有者している人が、コンクリートの壁をぶち抜いて扉を設置し、1戸につなげて利用しているのです。
そのまま何十年も経過しており、誰も何も問題視しておらず、規約上も「1戸の部屋」として扱われるようになっています。(登記上は2戸に分かれているようですが…)

今では起こりえないことが、昔のマンションでは珍しくありません。

もはや、ちょっとやそっとのことじゃ驚かなくなりました!

ベランダにサンルーム

これも築40年以上のマンションです。

最上階の部屋で、泥棒が屋上からベランダに降りて侵入、盗みを働いたという理由で、防犯のためベランダ全体をガラスで覆ってしまったものです。
管理組合への届け出はなく、いつの間にか完成していたそうです。

住民さん
住民さん

避難経路を塞いでいないから他人に迷惑を掛けていない。
防犯のために絶対に必要だ!

こういう本人の理屈ですが、時間が経てば経つほど既成事実化して、撤去させることはどんどん難しくなります。

そうこうしているうちに大規模修繕工事の周期を迎え、このサンルームが問題になりました。

雨が直接掛からない・タイルが地上に落下しないといっても、共用部分である以上は当該ベランダも修繕範囲に含めるというのが管理組合の主張です。

まあ至極当然の主張ですが、サンルーム撤去の話し合いは先ほどの主張のとおり一筋縄ではいかず、「復旧することは認めるが、工事中は撤去すること。ただし撤去費用・復旧費用は本人が負担すること」という結論になりました。

当時の背景をよく知らない人たちは後から非難していたようですが、工事着工のリミットも迫っていた中で非常に難しい判断を迫られ、苦渋の選択だったようです。

いずれのケースも、今からでも原状復旧を求めることは出来るはずですが、そうしていません。

判例では、共用部に穴を開けた場合など、たとえ他の部屋に直接の害を及ぼさない場合でも、原状復旧を求めることが認められています。(下記の記事にて解説)

法的に白黒をつけるだけが解決ではない、と考える管理組合や事情もあるということですね。
法律や判例の知識は抑えた上で、現実の解決は別に模索しなければならず、アドバイスの難しさを感じます。

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