野鳥・ネコへのエサやりトラブル~有効な対抗策は法律?条例?使用細則?

エサやり

春を迎えると、ハト・スズメなど野鳥や野良ネコへのエサやり問題が増えます。

繁殖期になると親子ネコが現れて、ついエサをあげてしまう人がいます。

ペットの飼育が可能か禁止かに関わらず、常識的に考えて「周りに迷惑をかけるダメな行為」ですが、規約・使用細則に明記している事例はあまり多くないようです。

エサやりが習慣化すると数がどんどん増えて、相手(鳥やネコ)も簡単に居なくなりません。

トラブルが起きた時に迅速に対処するため、またトラブルを未然に防ぐためにも、使用細則に明記するべきだと思います。

エサやりの何が問題になる?

一番の苦情はフンによる被害です。

ハトやスズメは、まっすぐエサやりの部屋に飛んで来ず、一度は周辺のベランダなどに止まって(安全を確認して?)から、目的の部屋に飛んでくる習性があるようです。

そのためフンによる被害も広範囲に及び、時に冤罪を生んだりします。

住民さん
住民さん

あそこの部屋でエサやってるんじゃない?
しょっちゅう鳥が止まってるのを見るんだけど。
 ※実はエサを与えているのは別の部屋

更にハトやスズメに混じってカラスも飛んできて、車の屋根に乗って傷をつけたり…迷惑が迷惑を呼んでしまします。

ネコの場合も、フンは敷地全体、ベランダ・植栽・駐車場など、所かまわずです。

他にも鳴き声、羽毛の飛散、ダニ・虫の発生などの被害があります。

鳥のフンで汚れた車のイラスト
周辺住民に与える迷惑は大きいです

エサやりを禁止する法的な根拠は?

「動物の愛護および管理に関する法律(動物愛護法)」の第25条

動物を愛護する法律ということで、動物虐待のニュースなどで接する機会があると思います。

この法律で禁じているのは「エサやりによって周辺の環境を悪化させること」であって、エサやりそのものではありません。

またこの法律に基づいて改善の勧告・命令をする権限は都道府県知事にあるので、管理組合が改善を求めるとしても、この法律が根拠にはなりません。

そもそも、汚れや音などで実害が出ている場合に改善の勧告・命令が出来るのであって、未然に防げるわけではなく、対応が「後手」になってしまいます。

動物愛護法 第25条
都道府県知事は、多数の動物の飼養又は保管に起因して周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
2  都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対して、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
3  都道府県知事は、市町村(特別区を含む。)の長(指定都市の長を除く。)に対し、前2項の規定による勧告又は命令に関し、必要な協力を求めることができる。

各自治体が定める条例

自治体ごとで条例を定めているので、それぞれ内容が異なるため確認が必要です。

しかし、野鳥・ネコへのエサやりを完全に禁止している条例は多くなく、例えば「カラスのエサやりは禁止(ハトやスズメはいいの?)」「エサやりしないように努めること(努力義務だけど禁止ではない…)」という具合です。

例えば2019年にニュースになった大阪市の条例制定。

罰則(5万円の過料)を伴う条例を制定しましたが、これもエサやりを禁止するわけではなく、「エサやりをした者が、フンや羽毛などの清掃をする義務がある」としたものです。

10年近く迷惑行為が続いていたことを受け、ようやく条例制定にこぎ着けたということでした。

「エサをあげないで」のイラスト(鳥)
無責任なエサやりが長年横行している

自粛を要請するしかない実態

色んな自治体のホームページでは「野鳥にエサをあげないで」と書いていて、チラシも作っているようですが、明確に禁止とする条例があまり整備されていないと感じます。

「周辺に悪影響を及ぼさないなら、エサやりしてもいい」という解釈が成り立ってしまうでしょう。

「悪影響」の線引きも、個別の事案ごとに判断しなければなりません。

法的な根拠が無いと、役所の職員さんが対応に苦慮し、周辺住民が被る迷惑が長期間におよぶことは容易に想像できます。

法律や条例を解決の拠りどころにするのは、即効性・実効性に乏しいですね。

法律や条例は被害が出た後の最終手段という位置づけで、予防にならないようです

判例はどうなっているか

悪質なケースでは、損害賠償請求が認められた判例があります。

こういう判例が予防線になってくれればいいのですが。

大阪地方裁判所 平成22年3月12日判決

ハトのエサやりを繰り返し、周囲の家にフンの被害を与えた事案です。

「周辺30mでのエサやりを禁止、および216万円の損害賠償」を認めました。

ただし一発アウトではなく、何度注意してもやめない、周囲にフンによる汚れの実害が発生しているという状況が続いたことによる判決です。

東京地方裁判所立川支部 平成22年5月13日判決

ペット禁止のマンションで、自室でネコを飼っている+野良ネコにエサを与えているため、周囲に糞尿による被害を与えたという事案です。

これも損害賠償請求は認めたものの、エサやりを違法行為としたのではなく、糞尿・毛・ゴミの散乱を放置し、それが受忍限度を超えていることが理由になっています。

受忍限度が判例のポイント

判例のポイントとして受忍限度を超えているかどうか、という点が共通しているようです。

これも裏を返せば「一定のエサやりは、迷惑を掛けない限り禁止しない」「ガマン出来ないほどの被害が継続し、改善しいなどの要件が揃わなければ禁止しない」と考えられます。

受忍限度を超えなければ対抗できないのであれば、法律・条例は当てにできません。

マンション単位での対応を考えた方が良さそうです。

使用細則の禁止事項でエサやりを禁止する

野鳥、野良猫(犬)へのエサやりを禁止する細則を定めた方が良いと思います。

といっても、なにも難しい条文を定める必要はありません。

禁止行為に追加・・・「野良猫、野良犬、野鳥などに餌付けをする行為」

使用細則の禁止事項に明記しておけば、管理組合の自治の範疇で対処することが出来ます。

なにより注意しても止めない場合、理事長による改善勧告・指示・警告、不法行為による訴訟など、強硬な手段の根拠にもなって責任を問いやすくなります。

「エサをあげないで」のイラスト
注意文書では効果が薄い

まとめ

常識的にみんながダメだと思っている行為でも、どちらかと言えば法律は動物を保護する側に寄っていて、被害が深刻になるまで対応出来ない印象を受けました。

よほどの実害が出ない限り法律の出番はなさそうなので、未然に防ぐため「管理組合のルール」を作って、違反者にもすぐ対処出来るように話し合ってみてはいかがでしょうか。

細則で規制できるのはマンション内だけです。

近所でエサやりしている家があって被害が出たら・・・。

自治体に相談し、長期戦も覚悟せざるを得ません!

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