理事会の議論が長引くのはなぜ?~(前編)原因と時間短縮して充実させるための対策を考える

理事会

フロント1人あたり、理事会は月に数本~10本程度出席します。
もちろん担当する件数や管理組合の方針によってバラツキがあります。

定例理事会…毎月または2ヶ月に1回、議題の有無に関わらず開催する
臨時理事会…特別の議題があったときに定例理事会とは別に開催する

資料作成、理事会出席、議事録作成、決定事項の事後処理まで一連の流れを考えると、それなりのボリュームがあります。

忙しいビジネスマンのイラスト
準備と事後処理の方が大変

担当件数が増えるほど負担になるので、できるだけ理事会の会議(以降、単に理事会と表記します)は1時間以内に終わらせたいものです。

特に雑談を楽しんでいたり、話題があちこちに飛んで迷走したり、結局結論があやふやなまま終わってしまうと議事録の整理も大変だし、帰宅時間も遅くなるし、ストレスが倍増します。

役員さんは集会室からそのまま部屋まで数分で帰れるけど、フロントは自宅まで1時間かかったりするんだよなあ。

理事
理事

早く終わらせたいんだけど、雑談好きな人が多いからね。
長引いてツライと思っている人もいると思うな。

フロントだけではなく、役員の中にも長い理事会に嫌気が差していということは耳にします。

会議を効率よく円滑に、更に決まったことを明確にするよう仕切る手法を「ファシリテーション」といいます。そして仕切る人のことを「ファシリテーター」と呼びます。

私も詳しいわけではありませんが、理事会にもこの手法を応用できると思いました。参加者の全員にとって有益なので、応用方法を考えてみます。

ファシリテーションで理事会を円滑に

理事会を仕切るといえば、真っ先に議長である理事長を思い浮かべると思います。

でも仕切り役(ファシリテーター)は議長に限らず、進行役を別に置くことも出来ます。

管理会社がファシリテーターになってもいいのですが「担当して日も浅いから、出しゃばるようでやりづらい」ということもあります。

出しゃばったと思われなくて済む「隠れファシリテーター」という立ち回り方があります!

総会は初めて顔を合わす人も多くて難易度が高いので、まず理事会を想定して考えてみます。

理事会が長引く原因と対策

管理会社が「隠れファシリテーター」として、理事会の会議(以降、単に「理事会」と表記します)をどう仕切ることが出来るのでしょうか?

その前に、理事会が長引いてしまう原因は主に3つあることを認識しておきます。

  1. 集まって話す必要が無い議題がある
  2. 議題が終了する条件が決まっていない
  3. 決まったことを確認していない

①集まって話す必要が無い議題がある

理事会で集まって話す必要性、目的はどこにあるのでしょうか?

理事
理事

定期的に集まって顔を合わせれば、何か話題や問題点は出るもんだよ

こういう理由も理事会の親睦を深めることに繋がることもあるし、1つの目的だと思います。

ただしこの場合でも、先ほどの「3つの原因」に当てはまらないよう気を付けなければ、際限が無く理事会が長引くことになります。

理事
理事

早く終わりたいのに、取りとめのない雑談ばかり!

こう思う人が出てきては、理事会への参加率も低下してしまうので失敗ですよね。

集まって話す目的は「複雑な議論が必要」「複雑な説明が必要」「相手の表情や反応を見ながら合意形成が必要」ということであり、得られる納得感が違います。

その逆に当たるのが「単なる情報共有」「単なる報告」が目的の場合です。

それなら資料配布やメール交換、あるいは関係者だけの会話で十分じゃないでしょうか。

後輩のフロントの理事会に同席したとき、月次収支報告の金額をひとつずつ読み上げ始めると、こっちがハラハラします。

もっとも報告が必要なこともあるので、出来れば事前に資料を配布して目を通してもらうのがベストでしょう。

当日に資料を配布するなら、数分の時間を取って読んでもらって、疑問があれば質問してもらう方が時間の短縮になります。

説明する場合は、補足が必要な重要ポイントに絞ります。
「全部読み上げろ」と言われたことは一度も無く、無駄な作業と時間を削減できるかもしれません!

その② 終了条件が決まっていない

起きている問題点を説明して「あとは皆で話し合ってください」というやり方では、何を目指して議論すればいいのか分からず迷走します。

  • 原因を突き止めるだけで目的を達成するのか。
  • 解決策まで決めるられるのか。
  • 解決するまで誰が担当するのか。
  • 期限はいつまでなのか。

話し合う問題の難易度によってどの段階まで決められるか、レベルの差はあります。
例えば「オートロックの自動ドアが不調」という問題があったとしましょう。

理事
理事

前にも同じことが起きたような?その時はどうやって直したんだっけ?
いくらかかったのかな?

理事
理事

私は一度も不具合に遭遇したことがないし、たまたまじゃないですか?
直す必要あるのかなあ…

理事
理事

オートロックで思い出したけど、宅配業者がオートロックをすり抜けて置き配するニュースを見ましたよ。
うちのマンションは防犯面が不安だし、防犯カメラを増設した方がいいんじゃないかなあ・・・。

理事長
理事長

話し合ってもしょうがないし、取り合えず業者に見積もり頼みましょ。

じゃあ次の議題に・・・

議題に入る前段階で「何を決めたいか」を明確にしておけば、色んな所に話が飛んだとしても、ゴールを意識した議論が出来るはずです。

今のところ故障の原因が不明なので、修理を前提とした調査を頼んで良いでしょうか。発注先の選定と金額の決済を誰がするのか、ご判断をお願いします

更に可能なら、この議題に何分くらいの時間を割り当てるか、時間配分も付け加えるとなお良いです。
時間を意識するのとしないのとでは、全然ちがいます。

ちょっと仕切り過ぎかな?と思うなら、理事長に根回しして仕切ってもらうのも手です。

理事長
理事長

今日は議題も多いので、この議題は10分で終わらせましょう!
修理を手配するか、しばらく様子を見るか、決めましょう。

その③ 決まったことの確認

どうしても、理事会で話題があちこちに飛ぶことは仕方のないことです。

色んな意見が出尽くした方が納得感も高まるので、脱線しすぎない程度に自由に発言してもらった方が良い場合もあります。

その反面、その②のように、結局何が決まったのか、誰がいつまでに何をすればいいのか分からなくなります。

  • その② で決定したかどうか不明な点
    1. 見積もりは管理会社が手配するのか、理事長が手配するのか?
    2. 原因を調べるための点検調査だけなのか、修理までするのか?
    3. 過去の原因や修理費用の履歴を調べる必要があるのか?
    4. 防犯カメラ増設の見積もりも必要なのか?

各議題の終了時に、決まったことのおさらいと確認は必須です。
言い出しづらいときは、次のような言い方なら心証も悪くないでしょう。

議事録を作るために確認したいのですが、〇〇〇〇の件は、××までに△△するという認識で合っているでしょうか?

理事長
理事長

いやいや、その件は□□だけするということですよ。

次回の理事会までに、☆☆理事にお願いしましょう。
皆さん、それでいいですよね?

理事
理事

あれ、そういうことに決まったんでしたっけ?
自分も△△すると思ってました。

これなら仕切り役(ファシリテーター)ではなくても出来ますし、かつ会議の目的や結論を明確にすることが出来ます。「隠れファシリテーター」と呼ぶ所以ですね。

この数分の確認作業をするだけで、人による理解のズレが無くなり「議事録の記載が違う」「なんでこの件がまだ終わっていないんだ」という無用なトラブルを避けることが出来ます。

ファシリテーションの手法はたくさん書籍も出ていて奥深いです。
今回は明日からすぐに出来る、一部の手法だけ理事会に応用してみました。

コメント