「〇〇マンションから、騒音の苦情の電話です!」
ハ~ッと溜息の出る電話取り次ぎNo.1かもしれません。
騒音問題はペット問題と並んで、解決が困難な問題だからです。
管理会社としては、最初の電話を受けた段階では被害者の一方的な話を聞くしかないわけで、けっこう辛い時間です。
フロントとして騒音の相談にどのように対応していけば良いか、いまだに良い答えは見つかっていません。
「管理会社に相談しましょう」は正しい解決方法?
ネットで騒音問題について検索すると「当事者間のトラブルを避けるため、管理会社に相談しましょう」と書いているのをよく見ます。
でも管理会社の立場から言えば、それが正しい解決策なのか、非常に疑問に感じます。
すでに「当事者間のトラブル」になってるのに「トラブルを避けるため」というのはおかしい・・・・
賃貸マンションと分譲マンションの管理は違う
賃貸マンションの場合は大家さん・管理会社の権限が強いですから、最悪の場合は加害者側を退去させることも出来るのでしょう。
トラブルが嫌なら、どちらかが自分から退去するという選択もあります。
しかし分譲マンションはどちらも所有者。そう簡単に転居なんてできません。
そして、管理会社は管理組合から委託を受けていて、個々の住民と契約しているわけではありません。
管理会社・管理組合は、明らかに規約に違反している行為でもない限り、住民間のトラブルの仲裁をする立場にはないのです。
「騒音問題は管理会社に相談しましょう」なんて、解決してもらえると期待を持たせるような書き方をしないでほしいですね
騒音にはどんな種類がある?
「騒音」といっても、人為的に発生させているものや無意識の音など、色んな種類があります。
- 人の話し声、騒ぐ声
- テレビやステレオのボリューム
- 生活する上で発生する音(足音、扉を閉める音、物を落とす音)
- 原因が特定できない音(打診音・振動音・金属音など、設備的な原因?)
また音が発生する状況も「常時ではない」「時間帯がバラバラ」「決まって同じ時間」「一定の条件の下だけ」など様々で、原因の特定を難しくします。
音の発生源・原因の特定が困難ということは、解決も困難
音の種類も発生条件も簡単に特定できないのに、相談者は「決めつけ」「思い込み」で話します。
ですから色んな角度からヒアリングして、なるべく特定に近づく努力をしてみます。
何時ごろ、直近ではいつ頃聞こえましたか?
しょっちゅうですか?
初期のヒアリングの時点ではおススメできません。
このような「作業」を指示されると「解決してくれる」という期待が高まります。
また、記録のため音に注意を向けることで音に過敏になってしまいます。
お部屋の間取りの、どのへんで聞こえましたか?
「自分の部屋の中で誰かが歩いている音がする!」と恐怖していたら、
実は上の人の足音でした。(※私の実体験)
コンクリートを伝わって、斜めなど離れた部屋に音が聞こえることも。
音の種類はどんなですか?大きさは?
エクササイズで飛び跳ねたり健康器具を使っていた
夜中にタイマーで動くパン製造機が生地をこねる音だった
太鼓の達人で遊ぶ音だった(本当にありました)
大工仕事とは限りません。
つまり、思い込み・決めつけで先入観を持つと、大きな間違いをすることも。
どうやって解決すればいい?
冷たいようですが、原則として当事者で解決するしかないです。
いくつかの解決パターンを整理してみます。
当事者間の話し合いで解決
お互いにあいさつできるくらいの顔見知りなら、直接言うのが解決が早いし円満です。
逆に第三者を入れることで「なんで直接言ってくれないんだ」と不満に思われる場合があります。
もし顔見知りじゃなくても、直接言うことで解決できる可能性があります。
でも知らない人の家をピンポン鳴らすのも怖いし、喧嘩になったら嫌ですよね。
だから管理会社を通じて苦情を申し入れるんですよね。理事長に苦情を訴える人もいます。
どうしても我慢できない夜中など、警察に通報する人もいます。(警察官も来て注意してくれるんですよ・・・ご苦労さまです)
とにかく自分で解決しようとせず、第三者を動かして解決しようとします。
気持ちは分かりますが…音を聞いて迷惑しているわけでもない第三者には、解決は難しいでしょう。
管理会社が注意する
第一段階として、注意文書を掲示するのが一般的でしょう。
でも、個人情報云々でボヤかした書き方になり、肝心の当事者に伝わりにくい。
だから効果も期待できない。
しかも全員の目に触れるので、逆に関係のない人を巻き込んでしまいます。
これは一番気を付けなければならないところです。
注意文書、私のことなのかな・・・
心当たりがあるような、ないような・・・
知らずに迷惑をかけていたら嫌だな・・・
誰からの苦情なのかな・・・不安で怖いな・・・
フロントが「加害者」に直接電話して注意することもあります。注意のお手紙を投函することもあります。でもこれは下策の部類だと思います。
当事者でもない第三者から注意されることで、逆に怒らせることになりかねません。
なんで直接言ってこないんだ!
事情を知らない管理会社を使って注意するなんて卑怯だ!
そして反対に、日ごろ隠し持っていた「被害者」に対する恨みを爆発させるキッカケになり、思わぬ反撃があったりして、余計にこじれることも・・・
理事会が仲裁する
双方を理事会に呼んで、役員が立会いの下で話し合ってもらうこともあります。
「話し合いの場」ということで解決できそうな期待があります。
でも最初のうちは冷静に話そうとするんですけど、空気に慣れてくると次第にヒートアップ。
役員は「立ち会っているだけ」だから、どちらかの味方は出来ません。
ますます泥沼化して、「理事会は解決してくれない!」「私の言い分を信じないのか!」と恨みを買うことも・・・・
でも全員が初対面の場になるようでは、結果は蓋を開けるまで分からない。
どちらに転ぶか分からないのは「賭け」に近く、逆に溝を決定的にするかもしれません。
初対面の三者面談は相当な根回しや準備をしない限り、場当たり的にやるべきではありません。
私見です
騒音問題のほとんどの原因は人間関係、ご近所トラブルです。
これは、管理会社や理事会が仲裁して解決することではないと思います。
一軒家なら、自力で何とかして解決しなきゃいけないこと。
どうしてマンションなら管理会社に苦情を言って解決させようとするのだろう??
管理会社が業務として出来るのは、注意文書を貼るところまで。
それは「規約に違反する行為」の可能性があり、理事会運営補助業務の一環として行っているものです。
それ以上のことを管理会社に求めるのは「自分の言い分を信じて味方になれ」と求めることに他なりません。依頼主の味方をして、依頼主の利益のために行動するのは弁護士の仕事です。
フロントとして対応できること
最初に戻りますが、フロントとしてできることは、まず話を聞きます。
(無下に突っぱねたり、ぞんざいに扱うと別のクレームに変化します)
ここでは必ず、具体的な状況(時間・頻度・大きさ・音の種類など)を詳しく聞きます。
あとで注意文書を作ったり、管理組合に報告する場合に必要な情報であって、自ら解決するための情報ではありません。
具体性が無いと、上で書いたように無関係の人に余計な心配を与えます。
話しを聞いた結果、設備の異常などによる音ではなく「ご近所トラブル」だと判断した場合は、管理会社や管理組合が出来ることに限界があり、解決できるか分からないことを伝えます。
期待を持たせておいて、解決できなかった時の方が気の毒です。
それでも中には手助けが必要な場合も
成り行き上、どうしてもということで「加害者」に電話することがあります。
このときでも、決めつけた言い方は絶対にしません。
〇〇さんから(具体的な状況を伝えて)こんな音が聞こえるっていう相談があったんですけど、××さんのお宅でも聞こえたりします?
このように「尋ねる・お問い合わせ」という体裁です。
私も実際に音を聞いたわけじゃないので、決めつけが出来ないからです。
もし自覚があれば、その時点で素直に謝る人もいます(解決!)
自覚が無くて「知らない」と言いながらも、気を付けるようになってくれる人もいます(解決!)
まとめ
管理会社、理事会には解決できない問題があります。
相談しやすいし、自分では言いづらいというのも分かりますが、当事者間のトラブルは、当事者の解決が原則です。
こういうトラブルに備える意味でも、上下左右の方とあいさつしたり、ちょっとした機会に会話して家族構成など知っておくらい、顔見知りになるのは重要だと思います。
「防犯のため、あいさつしましょう」とよく言われますが、このような住民間のトラブル防止の効果も非常に大きいと思います。
この部分だけは管理組合が関与して、あいさつ運動につなげればいいかもしれませんね!
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