書面で総会!~注意したいことは?

書面決議

新型コロナウィルスは収束が見えないまま、早1年半が経ちました。
そんな中で、多くのマンションは2度目の定期総会を迎えています。

大人数が密室に集まり、時に大きな声で発言する場ですから、感染リスクが心配です。
総会を開こうとすると…

住民さん
住民さん

こんな時期に総会を開くなんて常識が無い!

住民さん
住民さん

書類を配るだけで総会を開いたことに出来ないですか?

住民さん
住民さん

町内会の総会は書面で済ませましたよ!
マンションも書面でいいんじゃない?

こんな意見や質問が多く聞かれました。
あらためて「集まらずに総会を開けないか?」という疑問に対して考えてみます。

しかし今回、条文の解釈やら要件やらゴチャゴチャ考えなくてはいけなかったので、うっとおしいかもしれません!
目次から、一番最後に飛んで結論だけ見てもらってもOKです。

「書面で総会」をおさらい

集まらずに総会を開くには、区分所有法や管理規約に定められている「書面決議」です。
(WEB会議もありますが、色んな環境や条件が揃わないと難しいので今回は横に置いておきます)

~標準管理規約より~
(書面による決議) ※電磁的方法を利用する場合は条文の一部が異なる

第50条 規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面による決議をすることができる
2. 規約により総会において決議すべきものとされた事項については、組合員全員の書面による合意があったときは、書面による決議があったものとみなす
3. 規約により総会において決議すべきものとされた事項についての書面による決議は、総会の決議と同一の効力を有する。
4. 前条第3項及び第4項の規定は、書面による決議に係る書面について準用する。
5. 総会に関する規定は、書面による決議について準用する。

この「書面による決議」の存在を知っていても、実際にやったことがある管理組合は少ないし、具体的な手続きを知っている人も少ないでしょう。

その理由の1つは、書面決議の要件を満たすハードルが非常に高いからです。

総会は「集まることが前提」なので書面総会には厳しい要件

「書面による決議」は2つの方法

標準管理規約の第50条には、2つの方法が定められています。

1項全員が「承諾すれば書面で決議できる」
2項全員が「書面で議案に賛成」する

このどちらかを満たせば、書面総会が成立するのですが…
1項と2項の意味の違いはお分かりでしょうか?

1項… 書面決議することを全員が承諾し、議案の賛否は別に意思表示して採決する
2項… 議案に対して全員が書面で賛成すれば、総会で決議とみなす

1項は、賛否は多数決で決める。
2項は「議案の内容に全員が賛成」が条件なので、より一層、利用する場面が限られるでしょう。

書面決議が難しい理由

ポイント① 戸数に比例して票集めが大変

20~30戸くらいなら、未提出者に個別に催促すれば何とかなります。
これが50戸、100戸、さらに賃貸(外部オーナー)の数が多いと難易度がグッと上がります。

普段から9割近い提出率が定着していないと、票集めがキツイでしょうね。
役員が分担して回収するくらいの意気込みが必要です。

足が渦巻きになって走る人のイラスト(男性)
文字通り「足で票を稼ぐ」ことも必要に

ポイント② 全員が書面決議をすることを承諾(または議案に賛成)

せっかく全員から回収しても、反対や無回答が一人でもあればダメです。
とにかく、書面決議することを全員承諾(1項)、または議案に全員賛成(2項)しなければ成立しません。

理事長
理事長

やってみなきゃ、どっちにころぶか分からない…

失敗すると、せっかくの準備や手続きが無駄になります。
成立する計算ができる時だけの方がいいですよ!

ポイント③ 様式に不備が無いこと

1項の「書面で決議することの承諾」は、議案ごとに承諾が必要とされています。

 ●「書面で決議すること」について、一括で賛成 ………… NG
 ●「書面で決議すること」について、議案ごとに賛成 …… OK  

 例)書面決議の承諾と、議案の賛否を同時に回答する場合
    「第1号議案を書面で決議すること」…承諾する/承諾しない
    「第1号議案」…賛成 / 反対
    
このように、議案ごとに「書面で決議すること」「議案の賛否」を回答してもらう必要があります。

でも、議案に「反対」なら書面決議も承諾しない可能性が高いと思うんですよね

(総会で議論してから決議したいと考えるでしょう)

【参考】
 横浜マンション管理ネットワーク書面決議を行う場合の承諾の取り方
 一般社団法人千葉県マンション管理士会マンション管理Q&A~総会を開催しないで書面で決議できますか?

ポイント④ 回答に不備があると手間と日数がかかる

書面決議は、やる側(管理組合・管理会社)も慣れていないし、回答する側(区分所有者)はもっと慣れていません。

だから見慣れない用紙が手元に届くと、絶対に戸惑います!

組合員
組合員

えっ?これ総会の代わりになるの?

組合員
組合員

どういう意味?
どこに何を書けばいいのか分からないなぁ…


全員から回収できても、不備がない回答が一発で揃うことは期待できません。

回 収
 ↓
不備の内容をチェック
 ↓
訂正してほしい内容を記入
 ↓
返却して再提出を依頼
 ↓

回 収

これが外部所有者なら、返信封筒と切手の用意、郵送も加わります。
手間と時間が何倍にもなります。

組合員全体の方向性がある程度一致していないと、かなり大変な手続きです

定期総会を書面で??

コロナ対策で密集を避けるため、年に1回の定期総会も書面で済ませたいという要望もあります。
結論を先に言うと、定期総会は書面では出来ないという見解です。

「出来ない」というより「事実上、出来ない(意味がない)の方が正確かもしれません。

というのも、理事長は年に1回、総会で事務を報告する義務があります。
下の法務省の見解を参照してください。
書面総会で定期総会の「議案」が承認されたとしても、別に「報告会」を開かなくてはならないのだとすれば、全く非現実的ですね。

●法務省 マンションの管理組合等における集会の開催について  より一部を抜粋
区分所有法においては,管理者又は理事が,少なくとも毎年1回集会を招集しなければならないとされ,集会において毎年1回一定の時期にその事務に関する報告をしなければならないとされていますが(区分所有法第34条第2項,第43条,第47条第12項,第66条),前年の開催から1年以内に必ず集会の招集をし,集会においてその事務に関する報告をすることが求められているわけではありません。 
したがって,今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,前年の集会の開催から1年以内に区分所有法上の集会の開催をすることができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後,本年中に集会を招集し,集会において必要な報告をすれば足りるものと考えられます。

「総会の延期」は認めても「開催しなくてもよい」とは言っていません

「その状況が解消された後(に開催しなさい)」というの、1年以上もコロナ禍が続くことを想定していなかったのでしょうね

1年以上の延期を想定出来なかったのは仕方ありません。
今後これを踏まえて、何らかの法律等の改正が行われる可能性はあるでしょう。

WEBで総会を開けるならいいのですが…全ての組合・組合員が対応できるわけではありません。
「特別な状況下」では、書面の報告も認めるように緩和してもいいのでは?と思います。

まとめると

ちょっと話があちこちに広がってしまったので要点をまとめると…

●書面決議は2通りのやり方
 1.書面決議をすることに全員同意 + 賛否は普通の総会と同様に多数決
 2.全員が書面で議案に賛成

●全員から書面を回収するのが大変
 戸数と外部所有者の多さに比例して100%回収が大変

●要件や書式の間違いがないこと
 全員の承諾(賛成)を取る
 承諾書・賛否の回答の書式を間違えない など

●「定期」の総会に適さない
 書面決議では「年1回の理事長の事務報告」の義務を果たしたことにならない。
 総会を開いて1回で済ませるのが現実的
 臨時総会で組合員の方向性が決まっているならOK

もっと詳しい情報もありますが、最低限抑えておきたいのはこれくらいだと思います。
色んな見解や情報が飛び交っていて、整理が難しい問題でした…

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