専ら住宅、どう判断する?~標準管理規約

住宅

実際に自分が体験した相談・トラブルの事例を思い起こしながら、2022年2月に出版されたばかりの「マンション標準管理規約の解説」を読んでいます。

第12条 専有部分の用途

集合のメールボックスに、個人の名前と並んで保険代理店の会社名を表示しているお部屋がありました。

それを見つけた役員さん。

理事長
理事長

このマンションは、規約で営業行為は禁止されているんだよ。

住居専用しかダメなんだ。

会社名をポストに掲げるなんて、管理規約に違反してるでしょ。

すぐに外させなきゃ・・・!

と、管理人に言ってきました。

管理員がメールボックスを確かめてみると…

「510号室 有限会社マンカンフロント保険企画 / 山田とっと」※仮名

管理員
管理員

いつの間にか、個人名と会社名が並んで貼られてますね。

すぐに剥がすように言うべきなでしょうか?

確かに規約には、専有部分の使い方に関して「専ら住宅」と書いています。

事務所として使うことは認められない表現ですが…

標準管理規約の条文だけではなくコメントも読んでみると、今回のケースのようにメールボックスに会社の名前があるからといって、管理規約に違反していると断言は出来ません。

標準管理規約コメント
(専有部分の用途)
第12条
区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
住宅としての使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。したがって利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する。

コメントを読むとこの条文の目的は、事務所や店舗として使用することで沢山の人が出入りし、周りの住居の平穏を乱して迷惑を掛けることを防ぐ、と言えるでしょうね

参考:国土交通省HPより 標準管理規約(単棟型)及び同コメント(※PDF)

文字通り判断していいの?

規約に違反しているかどう判断するときは、条文を表面的な文字だけではなく、その条文の背景、目的、主旨など踏まえて総合的に判断するべきです。

●マンションの立地は平穏な住宅街の中か、繁華街など賑やかで人通りが多いのか
●どのような営業内容か(お客さんを呼ぶのか、デスクワークするだけか)
●不特定多数の部外者が出入りするか、たまに来客がある程度か、郵便物が届くだけか

などなど、実態を様々な面から総合的に判断しなければなりません。
個別・具体的な案件ごとに判断しなければならないのであって、表札がどうとか、営業行為を行っているとかいないとか、一部の事実だけ抜き出そうとすれば誤った判断をする可能性があるわけです。

放置したらこうなる

規約に明記してルールを定めたからと言って、まだまだ安心はできません!

規約に明らかに違反して営業行為をしている部屋があったとして、それを放置したらどうなるでしょうか?
管理組合が黙認していたならば、後から営業を止めろ・禁止しろと言えなくなるかもしれません

参考:東京高裁H23.11.24税理士事務所開設事件
管理組合が違反の是正に努めていたため、規約の信頼が損なわれているとは言えないとして、事務所としての使用を禁止した判例です。
もし管理組合自身が規約を軽視して、問題を放置していたらどういう判決になっていたでしょう…?

管理規約は、決めてしまえば安心というものではありません。
それを運用して、生かすも殺すも管理組合。もっと言えば「人」です!

今回の参考文献はこちら↓

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