修繕委員のえらび方~専門家は専門家とは限らない

修繕委員会

入居者の中に、建築関係・設備関係専門業者のがいたら、修繕委員に推挙されることが多いのは自然なことです。

入居者にマンション業界関係者がいたら、管理会社はやりにくい?で少し触れていたことですが、業界のすそ野は非常に広いため、分譲マンション、その中でも大規模修繕工事となると、関わったことが無い方が殆どではないでしょうか。

建築関係業界の人を選ぶということ

大規模修繕工事では、建築会社や設計事務所との打ち合わせが頻繁に行われるため、専門用語を知っていると話の理解が早いというメリットがあります。

現場代理人さんは説明に慣れていないせいか、専門用語をバンバン使うので、いつも隣から割り込んで通訳しています。

話し合いをしている作業員のイラスト
現場代理人さんは相手が素人でも専門用語で説明する…ことが多い

ですがそれでも私は、建築系の知識が修繕委員の必須条件だとは思いません。
実際に畑違いの業界の方でも、修繕委員長を務めた方はたくさんいます。

繰り返しになりますが、建設業界はとにかくすそ野が広いです。
でも一般の方の目線では、「建築」も「土木」も同じカテゴリに見えてしまいます。

住民さん
住民さん

ビルの新築工事もマンションの改修工事も、同じ建設業だし似たようなもんでしょう?

ある修繕委員は、役所で橋梁の施工管理を担当していると言っていました。

修繕委員
修繕委員

橋げたのコンクリートなんて大して直さなくても100年もつのに、なんでマンションは10年ちょっとで大規模修繕工事をやらなきゃいけないんだ

うーん…専門家は必ずしも専門家ではない、ということの表われだな。

もし本気で知識を求めるのなら、「分譲マンション」の「改修工事」の知識が必要です。
でも、そんな人は中々いませんし、その必要もないです。
どうしても建設業界にこだわるなら、塗装だけ、防水だけに詳しくてもいいです。
なぜなら修繕委員に求められる重要な役目はもっと別なことで、知識は「あった方がいい」という程度に考えているからです。

修繕委員の役割は

修繕委員の役割は細則等で規定しているかもしれませんが、大雑把に次の3本柱だと思います。

  • 委員会全体を統括すること
  • 理事会と歩調を合わせて事業を進めること
  • 総会等で組合員への説明すること

委員会が空中分解しないよう意見をまとめる「調整力」

大金が動く事業だけに、時に委員同士でもめることもあります。
そんなとき、ニコニコしながら空気の流れを読んで、話をまとめる調整力が必要です。
特定の意見に偏らず、かといって無下に切り捨てない、公平なバランス感覚があれば、委員会がバラバラになることは無いでしょう。

住民の立場を考えた分かりやすい「説明力」

「総会への最終提案は理事会」ですが、実際のところ修繕委員長が説明することが多いでしょう。
そんな時でも独りよがりにならず、初めて話を聞く住民さんの立場に立って、時にわけが分からない反対意見をぶつけられても、分かりやすく丁寧に説明する力が必要です。
そこに専門的な知識は必要ないです。
同じ住民の立場で、なぜこの事業を進めたいのか、その動機をみんなが共有できるように説得すれば、後の細かな説明は専門家に振って任せればいいんですから。

決定権は理事会にある。では修繕委員長の立場は?

形式的に決定権が無いことになっていますが、中心になって推進している修繕委員(長)の発言力は無視できないものがあります。
当然と言えば当然のことですよね。
修繕委員会で検討したことに対して、異論を述べて、反論してひっくり返せる理事会は少ないでしょう。
(それが出来るなら、委員会は作らずに最初から理事会でやってると思います)

悪い修繕委員長のエピソードを思い出してしまったので、ご紹介しようかな。もう時効だろうし。

修繕委員長が大規模修繕を私的に利用した事例

初めての大規模修繕を迎え、修繕委員長に就任したのは建築関係の知識が全く無い方でした。
ただとても口が上手くて、アジテーション(扇動)が出来る人です。

設計事務所がコンサルタントで入っていたのですが、修繕委員長の強い意向により業者選定の段階になって急に、入札参加条件を追加して厳しいものに変更したんです

  • 地場企業は規模が小さいから除外
  • 資本金は****万円以上
  • 改修工事専門業者は技術力に劣るから除外、ゼネコン系に限る

たった2~3の条件を加えただけで地場企業は一切排除され、全国展開している超大手のゼネコンしか参加できないことになりました。
でも理由の説明が巧みで、だれからも反論はありません。

委員長
委員長

大事なわれわれのマンションの改修工事を発注するのに、規模が小さい・技術力に劣る企業に任せて、何か問題が起きたら責任取れますか?

コンサルタント業者は補償してくれませんよね?

将来の補償のためにも、大手企業に絞るべきです!

コンサルタントが入っているので、一見すると公平に業者選定が行われています。
それも参加条件が厳しいから、しっかりとした業者を選ぼうとしているように見えました。
しかし実際には、修繕委員長が意図する方向に誘導されています。

そしていざ入札してみると、誰もが知っているような、そうそうたる企業だけが名を連ねました。
その中でも1社だけ、仕様をグレードダウンした安価な見積もりも一緒に出してきました。
グレードダウンしているんだから、安いのは当たり前です。

この提案を修繕委員長は大絶賛し、他の業者に提案の機会を与えないまま、最終候補に決定してしまいました。

しかし、総会で矢面に立って提案・説明するのは(傀儡の)理事長です。
修繕委員長は理事長の補佐の立場を崩さず、前面に出ようとしません。うまいですね。

操り人形のイラスト
理事長はもはや傀儡と化していました

後で判明したのは、修繕委員長の親族がその企業に勤めていること
このような利益誘導行為が、いとも簡単に出来てしまうという事例です。
(この委員長は、他にも様々な不正を働いていたため失脚して後に退去)

修繕委員長に求めることと、周囲が気を付けること(まとめ)

建築関係の専門知識は必須のものではありません。
委員会や理事会の意見を調整して公平にまとめる調整能力や、組合員の目線に立って分かりやすく説明する能力の方がずっと大切です。

周囲が気を付けなければならないことは、修繕委員長に負担が偏らないよう、役割分担を積極的に買って出ることでしょう。
業者とのちょっとした打ち合わせに一緒に出席して、メモをとるだけでも心理的な負担がグッと軽減されます!

協力して進む会社員のイラスト
周りが支えれば「委員長」も引き受けやすい

周囲の協力のもう一つの効果として、委員長に力が偏ることを防ぎ、先ほどのような悪徳委員長の発生を防ぐことも出来るはずです!

修繕委員長、修繕委員、理事会のバランスが崩れないように、協力という形で緊張関係を作れば、自然と相互監視も機能するはずです!

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